締めの蕎麦は深山とせいろの2種盛り
日だまりの草原のような幸せな香りがする

 蕎麦懐石は綺麗に巻き上げた蕎麦寿司、野菜を巻いた蕎麦クレープがきて、締めの蕎麦は深山(みやま)※4とせいろの2種盛りがきた。

 深山というのは田舎蕎麦のことで、稀にその名でメニューに載せている店がある。江戸前蕎麦には深山の名が相応しいとのことかもしれない。せいろも深山も十割で、同じようにお日様に育てられた草のよい香りが頬を包むようだ。

神楽坂「志ま平」――江戸職人の粋が溢れる店内で楽しむ、巽蕎麦とお任せの蕎麦懐石2色盛り。左は丸抜きの十割、やや細身に打ってあるが香りが強い。右は丸抜きと玄蕎麦を丸ごとひいたものをブレンドした十割、陽だまりの草原に寝転んだ時に匂うような幸せな香りがした。

 夜はカウンターでゆっくりと古き器を愛で、江戸職人の技を舌で味わう。招いた人が何に想いがいくか、江戸の器か、江戸の仕事か、それとも江戸の遊びか。書物の中から読み取るより、生きた本人からこぼれ落ちてくるから、客の心持も300年前のゆるやかな時に遡れる。

「志ま平」の宴には江戸の物語が絵巻物のように写されていた。

※4 深山:蕎麦が収穫されたときは黒殻を被っている。それを玄蕎麦といい、玄蕎麦から挽くのを挽きぐるみという。挽きぐるみで打った蕎麦は一般的には田舎そばといわれ、まれに深山ともいう。

 「志ま平」
神楽坂「志ま平」――江戸職人の粋が溢れる店内で楽しむ、巽蕎麦とお任せの蕎麦懐石
●営業案内
・住所 東京都新宿区納戸町33
・電話 03-5621-8381
・営業 12:00~14:00 18:00~蕎麦売り切れまで
・定休 日曜
●HPこちら
●おすすめ:夜は3組程度しか取らないから、なるべく予約で、当日も電話を。お任せコースが6000円からあるので、あれこれオーダーするより安価。
●酒・料理:お昼なら深山とせいろの2色盛り(1100円)、鴨じるせいろ(1200円)が人気。日本酒は亭主のおすすめで5銘柄くらいを選んでもらうのがよい。
●訪問:気のおけない人をカウンターに招く。3人くらいまでがよい宴になる。江戸の歴史などの好事家、浅草好きを招くと、亭主と話が弾むことになる。
●地図こちら

  

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神楽坂「志ま平」――江戸職人の粋が溢れる店内で楽しむ、巽蕎麦とお任せの蕎麦懐石

脱サラしてわずか1年で、蕎麦激戦区の神田で人気店をつくりあげた著者が教える「ワンランク上の蕎麦屋の始め方」。著者が築き上げたノウハウに加 え、人気店への徹底取材で、そのこだわりと秘密を徹底解剖。蕎麦屋の開業準備から、極上店へ育て上げる秘訣まで、店づくりのすべてを惜しみなく公開。

 

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