イタリアマフィア「血の掟」にも
「不倫すべからず」の一文が

 実は、このことは、学術的な研究が証明する以前から、組織や集団を維持するための「知恵」として受け継がれてきた。例を挙げよう。1963年に、それまで実態が謎に包まれていた、イタリアのシシリアンマフィアのボスが残した「血の掟(マフィアの十戒)」が明らかになった。

 その中には、「ファミリーの仲間の妻に手を出してはいけない」、「妻を尊重しなければならない」など、痴情のもつれを回避するための掟が書かれていた。

 余談だが、その他の掟も「ファミリーには真実を話さなくてはならない」、「ファミリーや仲間の金を横取りしていはいけない」など、犯罪組織の掟というよりは、非常に真っ当な道徳訓に近いものだったので、皆笑ってしまったそうである。

 マフィアという組織にとって、不倫が組織崩壊を導くほどの重要問題であることをボスたちはわかっていた。そのために最も重要な「血の掟」に記したのである。

 さらに、この掟の例からわかるように、不倫がもたらす組織崩壊の危険性は、組織外の人との不倫よりも、組織内での不倫のほうが大きい。今回の山尾氏の疑惑の相手である倉持弁護士は、実質的な党の顧問弁護士的な立場。いわば「同じ仲間」であったことが、民進党の危機感に拍車をかけた可能性は大きいだろう。

 これらのことから、「仕事とプライベートを分けて考えろ」といくら言われても、人間の脳はなかなか言うことを聞いてくれない仕組みになっていることがわかる。それは原始時代から数万年に渡って、我々の脳に刻み込まれた行動傾向なのだ。

 だが、一方で、文明が進んで現代では、稀に不倫を容認する「文化」によって、社会を維持できている例もある。例えばミッテラン・元フランス大統領は、大統領時代に複数の愛人がいたが、フランスでは誰も問題にしなかった。

 日本もフランスのように不倫を容認する文化を持てば、こういった炎上もなくなるだろう。だが、それは非常に難しい。なぜならば「文化」とは誰かが作ろうと思って作ったものではなく、歴史の中で時間をかけて、人々の意図を越えて創られるものだからだ。

 脳に刻み込まれたものを払拭できるような社会規範を作るのは簡単ではない。フランスでは「恋愛時の情熱は、ときに道徳を上回る価値を持つ」という社会規範が長い時間をかけて創られてきた。そしてそのようなものは、「○○な文化を作りましょう」と呼びかけてできるものではない。

 それに加え、ネットによって情報があっという間に共有され、匿名で言いたいことが拡散できてしまう現代では、炎上の危険性は以前にも増して高くなっているといっていい。

 そう考えると今の日本で、炎上しないようにする一番の方法は、いうまでもなく「不倫しないこと」である。つまらないオチだが、本当にそれ以外の方策はないのだと思う。