さて、北朝鮮の金正恩政権が望んでいるのは、米国との直接交渉による現体制を温存する平和条約の締結、各種の経済制裁の解除と、願わくは経済的な支援の獲得だろうと推測される。

 一方、米国は、米国本土に届く核攻撃戦力を北朝鮮が持つことを認めないという姿勢を対外的に示している。米国も日本も、本気でそれが有効であると思っているかどうかはともかくとして、国連において北朝鮮への経済的な制裁の強化で、北朝鮮の核開発を抑止しようとしているように見える。北朝鮮向けの石油製品輸出を全面禁止とする米国の当初案よりも後退したが、9月11日に国連は北朝鮮向けの制裁案を議決した。

 これに対し北朝鮮の現体制は、核開発を抑えようとするよりは、核戦力を強化することによって、米国を始めとする外国に対する自国の交渉力を強化できると考えているのだろう。「経済制裁」という手段は、ここまでのところ必ずしも意図した効果を生んでいないように見える。

 日本、韓国、中国といったプレーヤーもそれぞれに重要な影響力を持っているが、主なプレーヤーは北朝鮮と米国であり、普通に見ると、両者は相手の譲歩を求めて相手を脅す「チキンゲーム」の関係にある。

 このゲームの下では、両国政府は、相手に対して強硬な姿勢をとり続けないと「格好が付かない」。

 しかし、一方のプレーヤーである米国にとって、北朝鮮は必ずしも不都合なだけの存在ではない。北朝鮮をめぐる緊張があることで、ミサイル防衛システムを始めとする軍備を日本や韓国などに売ることができるし、米軍の活動そのものに対する需要を維持できる面がある。通俗的な言い方で気が引けるが、軍産複合体にとって北朝鮮リスクの存在は好都合だ。

 また、やや長期的に見て、米国にとっての真のライバルが中国だとすると、北朝鮮が中国の管理下から逸脱したり、北朝鮮と韓国が統一に向かったりすることは、中国を牽制する上で好都合だ。