加えて、米朝両国とも、先制攻撃的な軍事行動を起こした場合、その反撃による損害が甚大であることを認識しているように思われる。ミサイル発射や核実験のテレビニュースなどを見ると、金正恩氏は正常な判断ができない異常な為政者のような印象を持ちかねないが、ここまでのところ、軍事的な衝突に至らないまま、北朝鮮は潜在的な交渉力を増しており、むしろ彼の意図通りに事が運んでいる。実は、合理的に物事を考えることができる人物なのではないか。

 米朝双方が合理的なプレーヤーであるとすると、緊張状態が継続しながら、本格的な軍事衝突は回避されると考えるのが妥当なのではなかろうか。

 だとすると、現実に戦争にならない可能性が大きいとしても、いかにも「戦争があるかもしれない」という状態は維持され続ける。そして、その状況がリアルであり続けるために、われわれを「戦争があるかもしれない」と心配させ続ける必要があることになる。迷惑な話だが、普通に考えるとこの辺りが「期待値」ではないか。

 そして現実に、偶発的な事態の進展によって、戦争が起こる可能性はなくならない。われわれは「北朝鮮リスク」と長期間付き合い続ける必要があるようだ。

「遠くの戦争は買い」の格言通りか

 さて、「投資家にとっての北朝鮮リスク」にテーマを絞ろう。投資家が、まず念頭におくべき原則は、「遠くの戦争は買い、近くの戦争は売り」という有名な相場格言だろう。

 特に株式市場は、経済環境の「不確実性」が高まること自体に敏感に反応する傾向があるので、世界のどこででも戦争が起こると、まずは株価の「下げ」で反応する傾向がある。

 だが、例えば、隣接するA国とB国が戦闘状態に陥っても、両国から遠いC国の企業にとっては、むしろ軍事関連の需要の高まりで業績が改善したりする場合が少なくない。戦争が遠い場合、開戦によって下げた株価は、絶好の“買い場”になる場合がある。これが、「遠くの戦争は買い」の典型的なパターンだ。