8月下旬、大手格付け機関により、今年2度目となる日本国債の格下げが行なわれた。欧州ソブリン危機や米国債のデフォルト騒動を経て、危機的な財政難に直面している日本についても、一部で国債の暴落を懸念する声が出ている。日本国債がデフォルトすることなど、実際にあり得るのだろうか。バークレイズ・キャピタル証券の土屋剛俊氏と森田長太郎氏は、著書『日本のソブリンリスク~国債デフォルトリスクと投資戦略』の中で、日本の財政問題について斬新な提言を行なっている。2人に日本のソブリンリスクの「本質」について、詳しく聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)
日本国債の「暴落」は考えられるか?
先進国になされるべき格付けのアプローチ
――米大手格付け機関のムーディーズが、8月下旬に日本国債の格付けをAa2からAa3へと引き下げた。東日本大震災の復興が足踏みしていることに加え、政治の混迷で財政再建が進みにくいと判断したためだ。大手格付け機関による日本国債の格下げは、1月のスタンダード&プアーズに続いて今年2度目となる。欧州ソブリン危機や米国のデフォルト騒動を経て、危機的な財政難に直面している日本についても、一部で国債の暴落を懸念する声が出ている。しかし、いざ格下げが行なわれても、投資家は大きく反応していないように見える。実際、日本国債がデフォルトすることなど、あり得るのだろうか。
現在格付け会社が採用しているソブリン格付け手法は、先進国の分析手法としては必ずしも適切ではない部分があるのではないかという印象を持っている。一口に国家の破綻と言っても、振り返ると戦争などの特殊要因を除けば、対外債務が膨らみ経常収支が悪化した小国が破綻し、その勢いで為替調整が起きるというパターンしかなかった。
規模の小さい小国については、「営業CFの倍率がどれくらいか」「いつまでに借りたおカネをキャッシュで用意することができるか」といった、一般事業会社の格付けロジックの延長線上で考えることも不可能ではないが、基軸通貨国や先進国の信用評価には、もう少し違う次元の分析アプローチが必要なのではないかと考えている。