北朝鮮で戦争が起きたら、被害はどれほどになるのだろう。1994年、父ブッシュ大統領の頃、北朝鮮の核開発を封じるため米軍が作戦を検討したことがある。核施設の破壊はたやすいが、北朝鮮が反撃すればソウルは火の海になる。全面戦争に発展する恐れが指摘された。

 最初の90日で、死傷者は米軍5万2000人、韓国軍49万人、民間人含む死者は100万人、との推計が出た。

 作戦は見送られた。いまだったら被害はどれほどなのか。

 安倍首相は「さらなる圧力を」とトランプを後押ししているが、「制裁や圧力で問題は解決しない」というロシアのプーチン大統領の方が冷静に見える。

 北朝鮮を追いつめ軍事衝突した時、日本にどれだけの被害が出るのか、政府は推計し、国民に伝えるべきだろう。

 北は核搭載が可能なノドンを既に配備している。第7艦隊の母港横須賀や米空軍横田基地などが標的になっている。首都圏が攻撃を受けたらどれだけの犠牲者が出るのか。

 いま戦争が始まっても米国に核ミサイルは届かない。戦火を浴びるのは日本と韓国だ。北朝鮮にもおびただしい犠牲者が出る。トランプと金正恩のチキンゲームで危機にさらされているのは我々なのだ。

 爆撃で問題は解決しない。ならば対話しかない。「今は圧力を掛ける。対話の時ではない」「対話のための対話は意味がない」。もっともらしいコメントを有識者とされる人が言っているが、ではいつから対話を始めるのか。

 「経済制裁の効果が出て、北が音を上げるようになったら」などと希望的観測を語る人もいる。経済制裁は軍部の力を強めるばかり。ビジネスに携わる文民の力を削いでしまった。孤立は軍への求心力を高め、先軍政治を強めた。開戦前、経済制裁で日本はどうなったか。追い詰められればムキになり冷静さを失う。

 日朝平壌宣言をまとめるまでには、水面下で交渉が続いていた。当事者が信頼関係を築くのは容易なことではない。交渉開始は早ければ早いほどいい。