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吉田恒のデータが語る為替の法則

欧州危機に「ECB戦犯説」。そして、
8月前半に突然世界が変わった理由とは?

吉田 恒
【第153回】 2011年10月3日
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 金融市場の混乱、リスク回避の機運ですが、最近は少し落ち着く兆しが見えてきました。

 その背景として、じつは、ECB(欧州中央銀行)が利下げに転換する可能性が出てきたことが、一般的な認識以上に大きいのではないでしょうか?

欧州危機の再燃はECBが「戦犯」なのか!?

 ECBは今年、4月と7月の2回にわたって利上げを行いました。結果的に、その直後に欧州の財政懸念が再燃し、「資料1」のように、信用悪化へと向かった形になりました。

 ECBの利上げによって景気減速の可能性が浮上し、これによって税収が減るという思惑が広がり、財政懸念が再燃したと考えることもできます。ECBの利上げと信用悪化の関係は理解できるところです。

 そして、実際にそのような関係があるならば、最近にかけての欧州危機に対して「ECB戦犯説」を唱えてもよいでしょう。

資料1

 

 ただ、ここに来て、ECBが10月初めの理事会で利下げを決定するとの観測も浮上してきました。

 これまで見てきたように、欧州の危機がECBの利上げをきっかけに始まったと考えるならば、その反対に、ECBが利下げに転換することが、危機が一段落する1つのきっかけになるのかもしれません。

今回の危機の構図は「ある日突然」、出現した

 さて、「ECBで始まった危機がECBで終わる」といった見方に対して、そんな単純なものかと思われる方も少なくないかもしれません。

 この欧州の財政危機は根が深いものだけに、ECBの利下げだけで解決できるほど単純なものではないだろうという意見はあると思います。それはそのとおりだと思います。

 一方で、今回の「危機」が、そのような根深い問題がジワジワと広がってきたものかというと、それも微妙でしょう。むしろ「ある日突然」、危機の構図が出現したということではないでしょうか?

 たとえば、「資料2」で英国のFT指数を見ると、8月上旬の10日間ほどで急落し、その後はほぼ安値圏での横ばいの動きになっています。

資料2

 

 このように、8月前半の10日間ほどで、突然「世界が変わった」ようになったのは、根深い欧州財政問題の影響だったのでしょうか?

危機を再燃させた2つの判断ミスの修正にメドが立った

 8月前半は、米国がデフォルト(債務不履行)に転落するかに世界経済の関心が集まっていました。

 そして、米国がデフォルト転落を回避するために、短期的にも財政政策を引き締め過ぎるという懸念が浮上し、その結果、世界経済の先行き不安が急拡大して「10日間で世界が変わった」のではないでしょうか?

 少なくとも、8月半ば以降の政策当局者の発言から、彼らがそういった認識のもと、軌道修正を目指してきた様子が読み取れます。

 その上で、9月初めに行われたG7(主要7ヵ国財務相・中央銀行総裁会議)では、会議終了後に合意文書が異例の形で公表され、その中で、まさに「短期的な財政刺激の役割」を確認したわけです。

 このように、今回の「危機」の本質は、短期的な財政政策の判断ミスであり、その軌道修正はすでにメドがついたと思います。

 そして、その前からくすぶっていた欧州の危機再燃のきっかけも、ECBの判断ミスだった可能性があり、その軌道修正も行われるとなると、「危機」一巡がさらに前進する可能性はあると思います。

75円を割り込み、対円での豪ドルの割高は修正された

 このように「危機」が広がる中で、日本のFX投資家の間で人気の高い豪ドルも、対円で一時、昨年来安値の更新目前まで急落しました。

 そこで次は、この豪ドルの行方についても考えてみたいと思います。

 私はこの数ヵ月間、「豪ドルがさらに上がる可能性はない」、「むしろ一段安のリスクがある」、「今年の豪ドル高は終わった」といった見方を、レポートやセミナーで繰り返し示してきました。

 その最大の根拠は、豪ドルが割高である可能性でした。

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吉田 恒 

立教大学文学部卒業後、自由経済社(現・T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。同社代表取締役社長、T&Cホールディングス取締役歴任。緻密なデータ分析に基づき、2007年8月のサブプライムショックによる急激な円高など、何度も大相場を的中させている。2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケット エディターズ」の日本代表に就任。


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