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公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略

NTTは東京電力に代わる魅力的な投資銘柄になれるか
債務超過の顛末と、安定成長銘柄の主役交代を占う

高田直芳 [公認会計士]
【第68回】 2011年10月7日
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 「債務超過」という会計専門用語がある。日本航空(JAL)や東京電力などで人口に膾炙した言葉の一つといえるだろう。日本経済新聞で過去1年間(2011年9月30日まで)の記事を調べたところ、債務超過に関するものがちょうど200本あった。単純平均すると、1週間で4回程度は目にしている勘定になる。

 本連載の読者には、会計・税務の専門家や企業の実務担当者が多いので、「いまさら何を言う」の概念だ。ただし、債務超過というものをどれだけの人が正確に理解して、それを用いているかは別途考慮すべき問題である。

 難しい話を、難しく語るのは簡単だ。債務超過の話は、掘り下げていけばいくらでも難しく語れる。今回は、東京電力と国際会計基準IFRSの面からアプローチして、難解な債務超過の問題をあっさりと片づけ、後半はNTTグループの話へと展開して行くことにする。

 ということで、まずは債務超過の話をしていこう。本連載でも過去に、第16回コラム(JAL編)や第19回コラム(赤字国債編)などで債務超過の語を登場させている。そのときは明確な意義を示してこなかった。いくつかの理由がある。

 1つめは後述するように、ニッポンの会計制度では、債務超過を明確に定義していないからだ。これでは紹介のしようがない。2つめは、債務超過は企業に引導を渡すものであり、第三者が勝手に解釈すると混乱するだけだからだ。ところが実際には、勝手解釈が横行する事態になっているのは皮肉である。3つめは、筆者は原価計算や管理会計の専門家であって、「おくりびと」ではない、という事情もある。

 債務超過という用語を使っている人を見かけたら、「債務超過って、何ですか?」と質問してみるといいだろう。「貸借対照表の負債が、資産を上回っている状態だ」という答えが返ってきたら、重ねて「どこの法令で定められているのですか?」と質問してみるといい。結論は「嫌われる」。

 子どもでもない限り、そうした質問はするものではない。自分で調べる筋合いのものだ。ということで、債務超過が、現在の法令や制度の中でどのように定められているのかを調べてみることにした。

債務超過を定めた法令や
会計基準が見あたらない

 例えば東京証券取引所の「上場廃止基準概要(一部・二部・マザーズ)」を参照すると、連結貸借対照表ベースでの債務超過は上場廃止になる、と定めている。法人税法施行令96条1項2号を参照すると、債務超過先に対する金銭債権は貸倒引当金繰入限度額を構成する、と定めている。

 こうした例に共通しているのは、債務超過という事実を所与として、それが企業にどのような影響を及ぼすか、といったことを定めたものである点だ。法令だけでなく、会計基準も同様の定めかたをしている。そもそも「債務超過とは何か」という定義そのものを明確に定めた法令や会計基準が、実はほとんど見あたらないのだ。

 しつこく調べていくと、会社法510条2号で「清算株式会社の財産がその債務を完済するのに足りない状態をいう」と定めている。破産法164条1項にも似たような条文がある。債務超過を具体的に定義しているのは、これくらいしかないのだから驚く。

 しかもこれらの条文でいう「財産」とはすぐに換金可能なものであって、貸借対照表の「資産」ではない。また、清算株式会社という個別貸借対照表を想定しているから、東京証券取引所の上場廃止基準に当てはめることができない。連結貸借対照表を基準にした債務超過の定義はないのだ。

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高田直芳 [公認会計士]

1959年生まれ。栃木県在住。都市銀行勤務を経て92年に公認会計士2次試験合格。09年12月〜13年10月まで公認会計士試験委員(原価計算&管理会計論担当)。「高田直芳の実践会計講座」シリーズをはじめ、経営分析や管理会計に関する著書多数。ホームページ「会計雑学講座」では原価計算ソフトの無償公開を行なう。

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大不況により、減収減益や倒産に直面する企業が急増しています。この連載では、あらゆる業界の上場企業を例にとり、どこにもないファイナンス分析の手法を用いて、苦境を克服するための経営戦略を徹底解説します。

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