国内市場は今後数年間、ITサービスの大きな変革を経験することになります。優れた能力を備えた3つの無線技術、すなわち「LPWAN」「802.11ax無線LAN規格」そして「次世代移動通信システム」(以下「5G」)が、日本におけるビジネスの展開方法を変革すると考えています。
この3つの無線技術は、市場への投入が間近に迫っており、企業の中期ITロードマップにもすでに反映されているはずです。高速化と効率化が進んだこうした無線技術は、インターネットアクセスの高速化と効率化を実現するだけでなく、人手不足への対応、住民の安全確保やセキュリティなど、日本が直面しているさまざまな問題を解決する上でも大きな役割を果たすことでしょう。
【LPWAN】
低い消費電力で広域のIoTセンサーをカバーし
事業運営を最適化
ワシントン大学で金融学、マーケティング、スペイン語の技術経営修士および文学修士を取得。卒業後はテレコミュニケーションおよびデジタルメディア業界における市場調査、コンサルティング、経営分析で10年超の経験を有し、これまで日本、韓国、シンガポール、香港、オーストラリアなどの現地大手キャリアおよび大手通信機器メーカーで多数のプロジェクトを手がける。またCNN、CNBC、BBC Global、Channel News Asiaなどでのメディア活動に加え、主要なテレコミュニケーション・コンファレンスにおいて講演活動にも従事。2010年に来日し、グリー株式会社を経て、2013年から2017年4月までフロスト&サリバンジャパン株式会社にてICTリサーチ部門ディレクターを務めた。2017年5月から現職。
LPWANは、低帯域幅の信号を広い範囲に送信できる、これまでにない新しいタイプの通信ネットワークです。図1に示すように、従来の携帯電話やZigbee、Wi-Fiなどでは低帯域幅のアプリケーションで広域をカバーできなかったため、LPWANは市場の隙間を埋める技術となります。低帯域幅で広域をカバーできるという点では、最も類似する技術に衛星通信があります。しかし衛星通信はどちらかというと費用が高く、用途が限られていました。こうしたことから、LPWANは今では、新しいIoT製品/サービスを実現する技術と考えられています。
国内市場では京セラコミュニケーションシステムや、最近KDDIに買収されたソラコムなどの企業がLPWANを提供していますが、それでもLPWANはまだ国内市場に十分に浸透しているとはいえません。日本の通信事業会社が対応してNB-IoT規格が普及すれば、この市場は2018年には大きく成長するでしょう。LPWANでは、接続機器1台あたりの月次コストが近い将来100円を切ると見られます。これは、事業の運営状況に関するデータをより多く、より頻繁に集めたい企業にとっては非常に魅力的な選択肢となるため、国内企業は以下の分野でLPWANの導入を検討すべきです。
物流/サプライチェーン管理(SCM):
京セラコミュニケーションシステムは、LPWANとNECの人工知能(AI)を組み合わせ、埼玉県に本社を置くミツウロコクリエイティブソリューションズと協力してミツウロコグループホールディングスのLPガス配送業務の効率化に取り組んでいます。
人による作業の自動化:
NTT東日本とJAふくしま未来は、LPWANを使用した果樹の防霜対策に取り組んでいます。これにより、従来60人体制で行っていた木を検査する作業の必要がなくなりました。
住民の安全確保:
KDDIは神奈川県厚木市で、LPWANを使用して自然災害を防止する浸水監視サービスを提供しています。