志望度を上げていく、ITエンジニア・DX人材の心を掴む“魅力的な面接”とは?

かつて、日本の企業の多くは、システムの開発をSIerなどに発注していたが、昨今は「内製化」傾向が高まっている。一方で、ITエンジニアやDX人材は超売り手市場で、「思うような人材を獲得できない」という人事担当者の悩みを聞く。自身が元エンジニアであり、人材エージェント会社で2000名以上のエンジニアの転職をサポートし、現在、HRコンサルティングサービスや採用業務代行(PRO)サービスを提供する芦川由香さん(株式会社レイン CEO)が「ITエンジニア・DX人材の就活&採用事情」について筆を執る。その第2回は、前回に続き、「ITエンジニア・DX人材の転職の実態に関するアンケート」から見えたこと。(ダイヤモンド社 人材開発編集部)

*芦川由香さんの「HRオンライン」インタビューはこちら→人事部が自社に合ったIT人材を採用し、会社全体のITリテラシーを高める方法

目的の見えないDXが進む社会と
ニーズが高まりつづけるITエンジニア・DX人材

 近年、デジタル技術の進化は私たちの生活を大きく変え、オンラインショッピングやAIによるレコメンド機能などが普及しました。働き方においても、生成AIが業務効率化に貢献しています。多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しようとしていますが、目的が曖昧なまま進むケースも見られます。

 DXを推進するためにはデジタル人材が必要不可欠ですが、転職市場ではITエンジニア・DX人材が極めて有利な状況です。筆者の会社(株式会社レイン)では、企業向けにITエンジニア・DX人材の採用支援を行っており、あらゆる業種で人材ニーズが高まっている現状を肌で感じています。企業はこぞって、ITエンジニア・DX人材を求めていますが、求職者から選ばれるためには彼らのニーズを深く理解する必要があります。そこで、転職経験のあるITエンジニア・DX人材のニーズを知るために、551名を対象にしたアンケート調査(*)を実施し、求職者が選考体験で何を重視するのかを分析しました。

 前回は「応募したくなる求人・応募したくない求人」について解説しましたが、今回は「志望度が上がった面接・下がった面接」について解説します。ITエンジニアやDX人材の志向を理解することが、面接や採用活動全体に役立つはずです。

* 2024年【第一弾】ITエンジニア・DX人材転職の実態に関するアンケート(2024年11月実施)

候補者の志望度を高める面接とは?
アンケート結果とディスカッション面接のすすめ

 まずは、「面接によって企業の志望度が上がった体験」についてのアンケート結果を見てみましょう。最も多かった回答は「自分が書いているテック記事や論文などを事前に見てもらえていた」で、40%の人が志望度向上に繋がったと回答しています。これは、自身の技術力や成果が事前に評価されていると感じられることが志望度を高める大きな要因であることを示しています。次いで多かったのは「キャリアアップのイメージが持てた」(36%)、「一緒に働く社員のレベル感や優秀さを知ることができた」(31%)、「求人やHP上の情報ではわからないことを知ることができた」(25%)という結果でした。候補者は、将来の成長機会、一緒に働く人々の質、そして、企業の内情について、より深く理解できることを求めていると考えられます。一方、「面接をしたことはあるが、企業の志望度が上がったことはない」と回答した人はわずか2%でしたので、面接が候補者の志望度に影響を与えることは明白です。

 ちなみに、著者が過去に実施した部門面接で「良かった」と思うものは、一方的な質疑応答ではなく、ディスカッションのような面接でした。技術者にとって、技術や開発内容、開発環境について語り合うことは、候補者と面接官共に有意義で楽しい時間です。そういった対話の流れの中で、候補者は自然と自身のキャリアや就労環境について具体的なイメージを描けるようになります。一方、面接官も会話の進め方や技術的な話題へのアウトプットを通じて、候補者の企業文化への適合性や技術レベルを的確に判断できるのです。

 もし、自社の面接が候補者を見極めることに偏った一方的なものになっているのであれば、ぜひ、「ディスカッション面接」を導入してみてはいかがでしょう。候補者と面接官双方にとって、より実りのある時間になるはずです。