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相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

住民に無断で確定申告、還付金不正受給…
旧角館町が組織的“官官詐欺”に走った動機

相川俊英 [ジャーナリスト]
【第34回】 2011年10月14日
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 人を励ます言葉に「努力は必ず報われる」というものがあるが、現実は必ずしもそうではない。必死に頑張りながらも成果をあげられず、悔し涙に暮れた経験を誰しも持っているはずだ。「努力は必ずしも報われるものではないが、それでも努力を重ねることに価値がある」というべきだ。

 世の中には残念ながら、結果的に報われない努力もある。だからこそ、目に見える結果だけで評価を下すことは避けねばならない。そうでなければ、成果に拘泥し、視野狭窄に陥ってしまう人ばかりとなってしまうからだ。結果や数値ばかりを追っていると、人はいつしか仕事の本来の使命や役割を見失い、誤った道を疾走する間違いを犯してしまいがちだからだ。

 こうした現象は役人の世界に起こりやすい。役人は権限を行為する立場で、不正とは無縁の存在と思われている(最近は違うが)。その一方で、仕事ぶりは外部から見えにくく、チェックもされにくい。そのうえ、評価が閉ざされた役所内の論理で下される。手柄をあげようと懸命に仕事をしているうちに努力のベクトルが大きくズレてしまい、とんでもないことを仕出かしてしまう役人が生まれてしまう。証拠物を改竄した大阪地検特捜部の主任検事はその代表事例だが、他にもたくさん存在する。

 官が官を騙す「官官詐欺」である。

 「国や税務署、県、住民を騙していたことになる。行政は不正をしないという大前提があるが、やろうと思えばできるし、土壌もある」

 こう語るのは、秋田県内の市民団体「生活と健康を守る会連合会」の鈴木正和会長だ。

 税の自主申告運動を長年行っている鈴木会長は今年2月、耳を疑うような相談を受けた。相手は旧角館町(現在の仙北市)に住む女性会社員。こんな内容だった。今年の1月に仙台国税局員が突然、「確定申告について聞きたい」と自宅を訪ねてきた。そして、「家族3人が3年間で180万円の医療費を使ったとあるが本当か」と、質問してきた。女性会社員は自分で確定申告しておらず、全く身に覚えがなかった。思いもしなかった税務調査に女性は仰天。大慌てで市に情報公開請求すると、自分と長男名義の03年から05年分の確定申告書が見つかり、計約25万円が還付されたことになっていた。もちろん、還付金など一銭も受け取ってはいない。キツネにつままれたとはまさにこのことだ。それでも国税局から05年分の修正申告をするよう求められ、困っているというものだった。

 この相談から驚愕の事実が次々に明らかになっていった。三町村合併(05年9月)で秋田県仙北市となる前の角館町による、確定申告偽造と不正還付金詐取事件である。

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相川俊英 [ジャーナリスト]

1956年群馬県生まれ。放送記者を経て、1992年にフリージャーナリストに。地方自治体の取材で全国を歩き回る。97年から『週刊ダイヤモンド』委嘱記者となり、99年からテレビの報道番組『サンデープロジェクト』の特集担当レポーター。主な著書に『長野オリンピック騒動記』など。


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国政の混乱が極まるなか、事態打開の切り札として期待される「地方分権」。だが、肝心の地方自治の最前線は、ボイコット市長や勘違い知事の暴走、貴族化する議員など、お寒いエピソードのオンパレードだ。これでは地方発日本再生も夢のまた夢。ベテラン・ジャーナリストが警鐘を鳴らす!

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