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岸博幸のクリエイティブ国富論

民主党政権がスティーブ・ジョブズから学ぶべきこと

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第159回】 2011年10月14日
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 Appleのスティーブ・ジョブズ氏が10月5日に死去して以来、特に米国ではあらゆるメディアがジョブズ氏に関する特集を行なっていたが、それらの報道を読んでつくづく感じたことがある。民主党政権の政治家こそ、ジョブズ氏の功績から学ぶべきではないだろうか。

ジョブズ氏の功績

 ジョブズ氏の功績についてはメディアで十分に報道されている。その多くが、アップルを全米で最大の時価総額の企業に育て上げた企業経営者としての手腕、技術者としての卓越した部分、そして何よりもデザインにこだわり製品の細部にまで口を出したデザイン重視の姿勢を評価している。

 しかし、ジョブズ氏の功績の中でもっとも評価し、そして見習うべきは、社会の進化の方向と問題点を予見し、それらをデザインと技術の力で実現・解決するという、改革者の姿勢ではないだろうか。

 米国のある評論家の解釈によれば、ジョブズ氏はデジタルとネットの普及に伴って社会が進化すべき方向を直感的に理解していた。20世紀的な価値観の下では、すべての人が大企業の提供するマス向けの製品やサービスを使い(その代表はテレビ番組であろう)、また政府や企業ではピラミッド型のヒエラルキーと中央集権的な意思決定が当たり前であった。

 しかし、デジタルとネットが当たり前になるに伴い、個人の選択の自由や価値観の多様化といった“customization”が進むことになるが、その方向性をもっとも分かりやすく具現化したものがiPhoneでありiPadである。アップ・ストアから好きなアプリを購入して、自分専用にカスタマイズされた情報の入り口をすべての人が持てるようになったのである。

 同時に、ジョブズ氏はデジタルとネットの普及による社会の進化がもたらす問題点も直感的に認識していた。リアルの世界よりもネットが生活の中心になると、他人とのつながりが希薄になり、個人の孤立や地域のコミュニティの崩壊が進みかねない。

 それをデザインと技術の力で補完すべく、ジョブズ氏はアップルを単なるハード・メーカーからサービスと価値観を提供する企業へと進化させた。アップルのロゴとユニークなデザイン、アップル・ストアの“集える場”への進化に加え、端末上ではビデオ通話など様々な“つながり”をもたらす機能も提供している。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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