ヤマト新3ヵ年計画に現場から痛烈批判、宅配危機は終わらず新中計は本来、今春に披露する予定だったが、“宅配危機”で策定が遅れた Photo:Rodrigo Reyes Marin/Aflo、Rika Yanagisawa

宅配危機に揺れるヤマトホールディングスが新しい中期経営計画を発表した。値上げや夜間専門ドライバーの新設でスピードV字回復を図るという。しかしその内容に現場ドライバーや中小事業者は首をかしげる。(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)

「こんな計画は、机上の空論にすぎない」。9月28日、ヤマトホールディングスは2017年度から3カ年にわたる中期経営計画を発表した。しかし首都圏で働くヤマトの現役ドライバーたちの間では、早くも冒頭のような反論が相次いでいる。

 ヤマトは240億円にも上る未払い残業代問題をきっかけに、今春から働き方改革と宅配事業の構造改革を推し進めている。しかし経営陣が打ち出す施策にはことごとく、「きれい事を並べるばかりで、ラストワンマイルの実態に即していない」などと現場から痛烈な批判が浴びせられ続けている。

 新中計の内容は、創業100周年に当たる19年度に売上高1兆6700億円、営業利益720億円を目指すというもの。16年度は売上高1兆4668億円、営業利益348億円に沈んだが、短期間で反転させる算段だ。

「荷物量を一度は減らすものの、新しい運賃の導入で売り上げは伸ばし、宅配ロッカーなどもフル活用して業務効率化を図る。最優先課題の働き方改革にも3年間で1000億円を投じる。そうして来年以降は収益力を回復させ、再び成長軌道に乗せる」。ヤマトの山内雅喜社長はこう主張する。

 具体的施策の一つが値上げを含む運賃改変だ。10月から27年ぶりに基本運賃を平均15%引き上げた。これと並行して大口法人1000社と個別に値上げ交渉を断行。9月末時点で「われわれのもくろみの8割近くは達成している」(山内社長)としている。

 最終的に値上げの成否を左右しそうなのが通販最大手、米アマゾンの動向だ。本誌の取材では、現行の1個当たり270円前後からヤマトが450円前後への変更を提案したものの、4割増になる380円前後で決着したもようだ。