“引き算”の商品開発

 銘柄炊き機能は、通常では5万円以上の高級機種にしか付いていないのが業界の常識だった。3万円台の炊飯器にこうした機能を搭載できるのはなぜか。

 まず同社が社内に精米事業部門を持ち、コメについての研究結果や知見が蓄積されているからだ。

 もう一つが、同社の独特な商品開発手法にある。アイリスオーヤマ家電事業部の石垣達也統括事業部長は、「最初に店頭販売価格を決め、そこから導き出した原価の範囲で消費者にニーズが高く、現状の競合品にはない機能を絞り込む。いわば“引き算”の開発を行っている」と明かす。

 例えば、近年高価格化が進む炊飯器だが、コストの多くがどんどん厚くなっている「釜」に集中している。一方で、消費者や量販店店員を対象としたテストでは、高級炊飯器が炊き上がりで高得点になるとは限らない、という結果が出ている。

「釜を厚くし過ぎても意味はない。炊飯器全体のバランスを取ることが重要」(石垣部長)と、「釜」へのコストを削った結果、他社にない機能を盛り込むことができた。

 すでに今期の家電事業の売上高は730億円に達し、規模では炊飯器大手の象印マホービンと並ぶほどに成長したアイリスオーヤマ。安かろう悪かろうではなく、自社の「十八番」と「引き算思考」を武器に、売上台数のシェアで「炊飯器メーカー」としてトップに躍り出る可能性が現実味を帯びてきている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)