そこで、現在の松橋卓司社長(59歳)の父であり、創業者である松橋章が世界で初めて接触型の機械式精密位置決めスイッチを開発、大ヒット製品となった。機械式の精密位置決めスイッチは温度変化や切粉、クーラントなどの悪環境に強く、300万回の動作を繰り返しても、2000分の1mm単位で検出できる精度を持っている。しかも、周辺装置が不要なので、省スペースで装置に取り付けることができ、価格もリーズナブルだ。

 メトロールでは世界最小の位置決めスイッチを開発するなど、機械式センサでは世界トップクラスのシェアを誇っている。中でも、CNC(コンピュータ制御)工作機械には不可欠な装置となっており、世界中で累計50万台以上のCNC工作機械に組み込まれている。

 新製品の開発にも怠りなく、2015年末に販売を始めた「エアマイクロセンサ」は、空気の圧力を使って加工対象物と治具の正確な密着を確認する装置だ。従来の空圧式のギャップセンサより10倍の精度を実現した。

 当時、80歳のエンジニアが開発した機械式のエアマイクロセンサは東京都ベンチャー技術大賞優秀賞を受賞した。その後、20代の若手社員が電子式にリニューアルし、精度と操作性を格段に向上させた。

 また、機械式位置決めスイッチを応用したもので、旋盤の加工前の棒状材料の長さを精密に測定し、無線で機械にデータを送信する「ワイヤレス寸法判別スイッチ」も開発。コードレスなので産業用ロボットなどにも使われている。

 いずれも、世界にない独自の製品で、売れ行き好調と松橋は語る。

メルマガとDMが武器
世界中のエンジニアがファンに

株式会社メトロールの松橋卓司社長

 中国やASEANを中心に順調に売上が増えており、前の2017年1月期では17億6500万円と売上も利益も過去最高となった。今期は20億円に達すると見込んでいる。松橋は嬉しそうにこう語る。

「海外での取引は、以前では企業の購買部が中心でしたが、最近では企業内のエンジニア個人から直接、メールで技術の問い合わせが入るようになりました。先日もスウェーデンの有力な設備メーカーの社員が3次元図面を送ってきて、エアマイクロセンサの使い方を相談してきたので、当社のエンジニアが丁寧にアドバイスしたところ、技術打ち合わせの段階に進むことができました。現在、サンプルを提供し、評価試験をするところです」

 それだけ、メトロールの製品が技術者個人レベルで世界に浸透しているということだ。認知度の向上に役立ったのが、個人向けのメールマガジンやDMである。同社では関係各社の重要なエンジニアの名簿を購入し、製品・技術情報を定期的に送っている。メールマガジンの購読者は海外で2万2000人、国内で3万6000人もいる。