いま、遺言や相続で悩まれている方が増えています。人それぞれ、いろいろな問題を抱えていますが、遺言があった場合となかった場合では、どう違うのでしょうか。ユニークな遺言の書き方を提唱する『90分で遺言書』の著者・塩原匡浩氏に、遺言のポイントを聞く。

財産は不動産だけ
でも、処分したくない

 知人の山田さんから、「大変なことになった。急ぎ相談したい」と連絡があったのは2月の寒い夜のことでした。

 たまたま事務所にいた私は、すぐにお会いすることにしました。事務所に入るなり、山田さんは次のように話してくれました。

「実は、親父が昨年末に亡くなったんだ。親父の財産は、いま私が家族と住んでいる土地と建物だけ。現金や預金は葬儀などでほとんど消えてしまったよ。妹と弟がいるんだけど、四十九日を過ぎてから、2人から財産を3等分してほしいと言われているんだ」

 どうも2人揃って弁護士のところに相談に行ったらしいのです。

 山田さんはその要望に応えたいものの、現金・預貯金を相続していないので、どうしたものかと悩んでいたわけです。家を売ってしまったら、山田さんの家族が住むところがなくなり、路頭に迷うかもしれません。

 山田さんのお父さんは、普段から、財産はすべて跡取りの山田さんに相続させると言っていたので、妹も弟も了解していると思っていたようです。

「元気な人だったから、まさかこんなに早く亡くなるとは思わなかった。何度も遺言の大切さを教えてもらいながら、結局、こうなってしまった。お恥ずかしいが、なんとか助けてほしい」

 いつも明るい山田さんが見せる落胆ぶりには、心中を推し量るものがありました。山田さんがお父さんの老後をどれだけ支えてきたかを知っているだけに、山田さんの気持ちを受け止めて、いくつかの提案をしました。