ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
岸博幸のクリエイティブ国富論

「TPP反対デモ」と「欧米のデモ」に共通する
本質的な発生要因と採るべき政府の対応

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第161回】 2011年10月28日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 TPP参加反対を叫ぶデモが盛んになっています。ギリシャを中心に欧州でも、そしてニューヨークを中心に米国でもデモが続いていることを考えると、日米欧と主要先進国すべてにデモが伝播したとも言えますが、日本のデモと欧米のデモを比較すると、どのようなインプリケーションが得られるでしょうか。

TPP反対デモと欧米のデモの共通点

 ギリシャやイタリア、スペインなど欧州で頻発しているデモは、債務削減のための緊縮財政に抗議するものです。金融危機が欧州全体に広がる中で、年金などの社会保障は削減されるわ、消費税は増税されるわと、中流階級以下の生活がどんどん圧迫されることへの抵抗と考えることができます。

 ニューヨークを中心に米国で続くデモは、「我々は99%だ」という主張からも明らかなように、米国人の1%の大金持ちが国全体の所得の20%を得ているという格差への怒りが背景であり、ウォール街の金融界がシンボリックな攻撃対象となっています。

 これに対して日本で盛り上がっているデモは、TPP、つまり自由貿易反対運動です。TPPに参加すると日本の農業が崩壊してしまう、医療でも国民皆保険が崩壊する、と与野党の政治家も大挙して参加して大騒ぎをしています。

 このように、日米欧のデモは表面的にはそれぞれ別の要因から発生しているものの、偏見に満ちた個人的な見解で恐縮ですが、本質的には同じ理由から起きているように見えます。それは「グローバル化」と「財政支出の削減」です。

 グローバル化が進むと、ウォール街の金融機関やグローバル企業は収益を増大できますが、中流階級以下の単純労働ほど機械や途上国の安い労働力に代替されるので、先進国では雇用や所得を維持するのが難しくなります。

 政府の財政に余裕があれば、財政出動でそうした層の生活を支え、社会的な不満も抑えることもできました。しかし、欧米ではリーマンショック以降の過剰な財政出動への反動で財政規律回復が優先されるようになり、それが不可能になったためにデモが頻発しているのです。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


岸博幸のクリエイティブ国富論

メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。

「岸博幸のクリエイティブ国富論」

⇒バックナンバー一覧