不況から抜け出せない日本において、今や数少ない成長市場と言えるスマートフォン。ありとあらゆる企業が「スマホ旋風」に乗って利益を伸ばそうと、試行錯誤を続けている。しかし、ここにきて、市場は早くも激戦状態に入りつつある。「iPhone」の生みの親・スティーブ・ジョブズの死は、「スマホ戦国時代」の幕開けを告げたとも言えるだろう。日本企業は勝ち残ることができるだろうか。そして、来るべき時代の覇者は? 「OS」と「端末」の最新トレンドを見ながら、その未来を占ってみよう。(取材・文/プレスラボ・梅田カズヒコ)

ジョブズ追悼ムードから追撃色へ
いよいよ本格化する「スマホ戦国時代」

 2011年10月5日、サンフランシスコの郊外で生涯を終えた男の話題が、世界中を駆け巡った。成功者にしては珍しい紆余曲折の人生、早すぎる死、偏屈な性格……。確かにどれをとってもユニークなエピソードに溢れていた、米アップル社の前CEO・スティーブ・ジョブズの訃報である。

 個人的な感覚では、日本国内でこれほど大きく報道された海外セレブの訃報は、マイケル・ジャクソン以来だったように思う。

 その偉大なる巨星・ジョブズが生涯のなかで生み出したもので、最も大きな存在が「iPhone」だろう。アップル社の時価総額を一時でも世界一へと押し上げたのは、片手にすっぽりと収まるこのスマートフォンの開発によるものだった。これまで重厚長大産業がイニシアティブをとっていたなかで、かつてのどの企業よりもスマートさを追求した「No.1商品」を世に送り出したのだ。

 ジョブズの革新的なアイディアにより、急発展を遂げたスマホ市場ではあるが、それがアップルの独占市場ではないことは言うまでもない。次々に新商品を投入するメーカーや、彼らとの提携を通じて覇権を狙う通信キャリアが入り乱れ、今や「スマホ戦国時代」の様相を呈している。

 カリスマ亡き後、早々と「追悼ムード」から脱した競合他社は、求心力が低下したアップルを追い落とそうと追撃色を強めている。そのなかで、アップルがこれまで通り「スマホ市場の王者」に君臨し続けられる保証はどこにもない。これから5年後、10年後の勢力図は、様変わりしている可能性もある。