今後の焦点はリコールの規模で、アメリカでは集団訴訟の可能性が現実味を帯びている。品質基準に満たないアルミ鋼材をグローバルに補償しなければならないことになれば、タカタの倒産とは比較にならないほどの経済損失が起きる可能性がある。

 ただ、国内においては不思議な現象が起きている。マスコミが神鋼の責任を声高に叫び、取引先もリコールなどの費用が発生すれば神鋼に請求すると言う一方で、なぜか強度が足りないアルミ材についてはそれ自体の安全を問題視する声が高まらないのだ。

 象徴的なのは神戸製鋼のアルミ材が使われていた鉄道各社の発表だ。新幹線から私鉄在来線車両まで、神戸製鋼の不正材料(納入品質に満たないアルミ材)が使われていることがわかったのだが、鉄道各社はそれぞれ早い時期に「車両の強度には問題がない」と言う結論を発表している。

 確かに、40年前から不正が繰り返し行われてきたとはいえ、現実にはアルミ材の強度が原因となった事故は起きていない。「安全率を含めて考えれば新幹線をこのまま運行し続けても大丈夫だ」という判断なのだろう。今日も鉄道は平常通り運行されている。

 一方で、神戸製鋼の取引先の中で目を引いたのが日産自動車だ。神戸製鋼所でデータ改ざんが発覚した鉄鋼製品の線材をボルトやナットなどにして日産車に使っている可能性があると明らかにした上で、仮に安全基準に適合しないと判断し、リコール(回収・無償修理)した場合、費用を神鋼に請求する方針だと強調している。

 なぜこの発言が目を引いたかというと、日産自動車が同時並行で、検査不正による莫大な規模のリコールを引き起こしているからだ。

 日産自動車の検査不正もこれまた奇妙な事件で、最終完成車の出庫を検査する資格のない従業員に検査をさせた上で資格のある社員の印鑑を押すという行為が、組織ぐるみで行われていたものだ。

おじぎの角度からもわかる
謝罪会見での「責任感」

「奇妙な」という点で言えば、日産自動車の西川廣人社長の記者会見が奇妙な注目を浴びたのは、社長がおじぎをする角度が浅かった点にある。「西川社長は会見で頭を深々と下げることはなく、『謝罪会見』とは一線を画した」(産経新聞 10月7日)など、これは謝罪会見ではないと報道された。神鋼の川崎博也会長兼社長が90度おじぎをして陳謝したのと対照的である。

 同じ産経新聞の記事では西川社長は「検査そのものは確実に行われており、安心・安全に使っていただける」とも会見で発言したと報道されている。

 実際、このような社長発言を受けて、日産の一部の工場では社長会見以降も引き続き不正検査が続けられていたことが発覚し、これがまたニュースで報道された。この追加分の不正検査で出荷された4000台については「リコールは考えていない」と日産は発表したが、翌日になってさらに不正継続の範囲が3工場に広がったことで、3万4000台について「追加リコールを検討する」とトーンを修正。さらに全6工場で国内向け全車両の完成検査、出荷、車両登録の停止を決定した。

 日産について私が理解できた点をまとめると、政府と約束したルールが守られていない点、組織的に私文書偽造が横行していた点は問題なのだが、品質に問題はないし、国内工場でつくった海外輸出品は日本政府の検査ルール外なので、これも問題ではないというのが、当初の日産自動車の責任スタンスだったようだ。