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財部誠一の現代日本私観

大洪水をめぐる報道と現実のギャップ
タイは日本企業にとって重要な国であり続ける

財部誠一 [経済ジャーナリスト]
【第9回】 2011年11月1日
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 「タイの人々が尊敬してやまないプミポン国王の王宮だけは何がなんでも浸水させない」

 タイ政府や国民の願いも叶わず、洪水はバンコク中心部にまで及び、王宮ばかりか政府の対策本部を設置していた国際空港にまで及んでしまった。なす術もなく、じわりじわりと流れだしてくる水の流れにすべてをゆだねるしかなかったというのが実情だろう。

 だが日本国内にいると、タイの様子がじつにわかりにくい。テレビ画面が伝える映像だけを見ていると、タイの製造業は壊滅してしまったかのような印象を受ける。

 たしかにアユタヤに工場をもつホンダの工場は早々に冠水し、そのダメージははかりしれない。3.11の震災時にもホンダは他社よりも甚大な被害をこうむっており、気の毒としかいいようのない不運が続いている。

 タイの現地の声を聞くと、洪水被害からの完全復旧までには最低でも半年はかかるという見方が多い。工場に浸水した水が引くのに1ヵ月。それから工場内をくまなく清掃し、使用可能な機械があればメンテナンスをするが、MCマシーンのようなコンピュータ制御の高性能機械は一度水没してしまうと使用不能になってしまうことが多い。精密金型も水に浸れば錆つき、使い物にならなくなる。新たに調達するのに、どれだけの時間とコストがかかるか。

 大変な作業ではあるが、ホンダのようなに資金力のある大企業であれば、半年ほどの工場停止にも耐えられる。また日本のある精密機械メーカーは、500人ほどいるタイ人の社員を一時的に日本の工場で働いてもらうことを検討している。日本は無理でも、タイの従業員を近隣諸国の工場ではしばらく働いてもらいながら、雇用を維持していくというのだ。

 しかし中小企業となると事情が一変する。生産停止のまま、半年間ものあいだ従業員をつなぎとめておくだけの体力を持った中小企業など滅多にあるものではない。

冠水をまぬがれたにもかかわらず
心中おだやかではない「日産の事情」

 タイの洪水被害を受けた自動車メーカーはホンダだけで、「マーチ」の生産をタイに全面移管した日産のタイ工場は幸いにして冠水をまぬがれている。だがその心中はおだやかではない。

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財部誠一 [経済ジャーナリスト]

1956年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、野村證券に入社。同社退社後、3年間の出版社勤務を経てフリーランスジャーナリストに。金融、経済誌に多く寄稿し、気鋭のジャーナリストとして期待される。BS日テレ『財部ビジネス研究所』、テレビ朝日『報道ステーション』等、TVやラジオでも活躍中。また、経済政策シンクタンク「ハーベイロード・ジャパン」を主宰し、「財政均衡法」など各種の政策提言を行っている。


財部誠一の現代日本私観

経済ジャーナリスト・財部誠一が混迷を極める日本経済の現状を鋭く斬るコラム。数々の取材から見えた世界情勢を鋭く分析するとともに、現代日本にふさわしい企業、そして国のあり方を提言していく。

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