ユニクロが探り当てたかもしれない「魔法の商品戦略」ユニクロの業績が、ひょっとするとさらによくなるかもしれない。秋冬商戦に見る商品戦略の「変化」を探る

在庫圧縮か機会損失か
ユニクロの難しい選択

 日本一の小売業はどこか。おそらくユニクロかセブン-イレブンが候補に挙がるはずだ。そのユニクロの業績が、ひょっとすると今よりもさらによくなるかもしれない。それを実現するためのツールをユニクロが手に入れたという話をしてみたい。

「日本一」と持ち上げておいてからこういう話をするのも何だが、先にユニクロを運営するファーストリテイリングの弱点を指摘しておこう。それは、グローバルな優良な小売業者と比較して、在庫の量が多すぎることだ。

 ファーストリテイリングの連結財務諸表から在庫回転日数(期中平均在庫を1日分の売上高で割った数字)を計算すると、55日間という数字が出る。つまり、ユニクロの店頭と倉庫には合計して約2ヵ月弱かけてようやく売り切れるほどの大量の在庫が積まれていることになる。

 一方で、グローバルな優良小売業の在庫がどれくらいかというと、アマゾンが29日、ウォルマートが33日。つまり1ヵ月程度の在庫で巨額な売上を上げている。在庫が多いと売れ残るリスクも多くなるし、それだけ多くの資金がそこで寝てしまう。

 アマゾンやウォルマートの場合、在庫を圧縮し、商品仕入れに使うお金を節約し、それをAIに投資して経営効率を上げ、結果として総資産利益率(会社の全資産に対する利益の比率。優良企業かどうかを測る一般的な尺度の1つ)を向上させるというサイクルで、優良企業への道を突き進んでいる。

 ユニクロは、これは企業文化でもあるが、いい商品をつくることにお金を費やし、それを店内に山積みしてディスプレイすることで集客するスタイルを採っている。そのぶん、在庫が増加して経営効率という面ではマイナスになる。