現場ドライバーから評価の声が上がるヤマトの「ホワイト化」
今春、にわかに顕在化した「物流危機」は世間にも大きなインパクトを与えた。物流業界内ではそれ以前から懸念されてきたことだが、一般消費者にも馴染み深い宅配便という分野で危機が表面化したこともあり、認識は想像を超えた広がりを見せた。
ただ、宅配便で起こっている現実は、氷山の一角であり、経済を下支えしている物流全体を取り巻く労働力不足の現実は厳しい。経済界も、物流機能の維持に向け、コスト面だけに執着した考え方を変えるべき転換点に来ている。
そうした中、物流危機の主役でもあるヤマトホールディングスが9月末に発表した「新中期経営計画」への評価が分かれている。
新中計は、総額240億円にのぼる未払い残業代問題の発生などを受け、働き方改革とデリバリー事業の構造改革に力点が置かれたものとなった。だが、その一方で、ヤマトが真に手掛けるべき課題は宅急便に次ぐ新たな事業の育成、つまり企業間物流を中心としたノンデリバリー事業の成長戦略ではないか、との指摘は根強い。
「デリバリー事業の混乱を沈静化させるシナリオについては、ある程度、納得できるものを示せている。だが、経営計画は本来、次の成長戦略を示すためのものであり、その部分では物足りなさを感じる」。ヤマトの新中計について、ある物流大手の経営幹部は率直な感想を述べる。