携帯電話やスマートフォンで遊べるソーシャルゲーム。日本国内ではモバゲー(運営会社はDeNA)とグリーが双璧だ。

 手軽なのが特徴で、携帯電話から専用サイトに接続して会員になればすぐに遊べる。基本料金は無料だが、ゲームを有利に進めるためのアイテムなどを使えば課金される。ゲームもほかのプレーヤーの宝物を奪ったり、魚を釣るなど操作が簡単なうえ、中断しやすいため、休み時間や電車の待ち時間などのすきま時間で遊べる。スマホの普及もあり、ソーシャルゲームが急成長してきた。2011年4~9月の半期決算で赤字となった任天堂と対照的である。

 これを象徴するのが、スクウェア・エニックス・ホールディングスの半期決算。同社は既存のゲーム機向けのヒット作が出ないことから、期初予想の4~9月期の営業利益は35億円(前年同期比40%減)だった。ところが、ふたをあけてみると、営業利益は74億円(同30%増)と2倍増となった。オンラインゲームやソーシャルゲームが予想以上に好調だったためだ。

 同社は既存のゲーム機での人気ソフト「ファイナル・ファンタジー」(FF)をモバゲー向けに投入することまで決定した。「ゲーム機向けのゲームソフトを購入したユーザーだけに、ソーシャルゲームで遊べる特別のアイテムを配信するなどの融合が可能」(首脳)という。

 ソーシャルゲームで収益を拡大しているのはスクエニだけではない。「ドラゴンコレクション」などのコナミや「ガンダムロワイヤル」のバンダイナムコホールディングスも、2012年3月期決算予想を上方修正した。

 ここで気になるのはソーシャルゲームの成長はいつまで続くのか、である。じつはその陰りが一部には見えてきた。プロ野球、横浜ベイスターズの買収を決めたDeNAの売上高に現れている。同社の11年7~9月期の売上高は、4~6月期に対して横ばいとなった。DeNA側は「自社開発のヒットゲームがなかったため」(幹部)というが、会員数の伸び率が鈍化してきているのは確かだ。新しいゲームで中高年などの新しいユーザーを獲得するか、既存のユーザーを飽きさせないでゲームを続けさせるか、の二択しかない。

 業界内には、「モバゲーの“ロワイヤル”シリーズはキャラクターを入れ替えれば新しいゲームができるだけのノウハウはあるようだ。だが、逆にそれが消費者にまたかと飽きさせないのか」(ゲームソフトメーカー幹部)との懸念もある。ただでさえ、日本の消費者は移り気だ。成長一辺倒のソーシャルゲームが分岐点を迎える日がいつなのか、ゲームソフトメーカーも安泰とはいかないようだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)

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