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スマートフォンの理想と現実

スマホからアプリが消える日――web化していくスマートフォンの未来

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第11回】 2011年11月16日
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 実際、Financial TimesやBBCは、HTML5での開発をすでに進めている。表面上は、技術トレンドの先取りというのがその大きな理由だろうが、その背景には、課金・認証の内製化や、他のWebサイトからの誘導や送客などの分析の精緻化が、見え隠れする。

その先にある課題に備えよ

 HTML5の台頭は、スマートフォンのWeb化を、強く推進していくことになるだろう。そしてそのトレンドをケータイ産業の視点で解釈すると、ここ数年で構築されたエコシステムが、早くも大きく変化するタイミングに来ていることを意味する。

 もちろんプラットフォーム事業者たちも、ただ状況を眺めているわけではない。まず、すでに顕在化しているのは、スマートフォン上で利用されるサービスそのものの、OSとの融合だ。たとえば最新のiOSがtwitter機能を取り込んだのは有名な話だが、今後はこうした「スマートフォンでよく使うサービス」が、OSやプラットフォームの基本機能として取り込まれていくだろう。

 また、HTML5時代の主戦場は、Webブラウザとなる。そのためOSベンダーたちは、Webブラウザのリッチ化や高機能化、またプラットフォーム機能(認証や決済等)との融合を、今後大きく進めていくことになるだろう。すでにGoogleはこのところ、同社のブラウザの強化に向けた研究開発やM&Aを活発化させている。

 このように考えると、アプリの善し悪しを開発者同士が競っていた時代から、すでに競争環境が変化しつつあることが分かる。おそらく今後は、優れたアプリを作るというよりも、Web環境での表現力や、PCも含めた様々な端末で一つのコンテンツを使い回す「ワンソース・マルチユース」を実現する技術力が問われるようになる。あるいはアプリ開発にしても、単にたくさん売れることを目指すより、OSベンダーやプラットフォーム事業者に「いかに買ってもらうか」が、事業の「出口」となるだろう。

 もちろん、そう易々と環境が変化するわけではない。非常にベタなボトルネックとも言えるが、特に国内ではHTML5エンジニアの不足が深刻化している。単純なWebサイト構築ではなく、HTML5の実装能力を最大限に引き出したサービス開発には、それなりの能力が必要だ。また、ここまでアプリ中心で進んできた、サービスのマーケティング・ノウハウにも、変化が求められる。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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