介護という「新産業」の登場
これまで述べてきたように、1990年代の後半以降、日本で起こった基本的な構造変化は、製造業の雇用が減り、介護の雇用が増えたことである。
両者はほぼ見合ったので、全体の雇用の減少は緩やかなものであった。
これをもう少し詳しく見ると、【図表1】のとおりである。
介護職員数は、2000年の約55万人から2005年には約112万人と、約2倍になった。施設の職員よりは在宅サービスの職員の増加が顕著である。
なぜこのような急激な増加があったかと言えば、要介護人口が増えたからだ。要介護人口は、この間に、218万人から411万人へとほぼ倍増した(【図表2】)。平均年率でいえば、13.5%という高い値だ。
ところで、高齢者人口はこの間に増えてはいるものの、5年間で倍になるような急激な変化ではない。要介護比率は、80歳以上から増加すると言われているが、80歳以上人口は、5年間で約1割増えているに過ぎない。
要介護人口の急激な増加は、介護保険が整備されたからである。2000年4月に導入された介護保険制度によって、要介護が顕在化したのだ。
つまり、この10年間程度は、特殊な期間だったと言うことができる。介護保険制度が導入されて要介護が顕在化し、それに対応するために介護職員数が急増したのだ。
その意味で言えば、「介護という『新産業』が登場して雇用を吸収した」と表現してもよい状態だったのである。