全国で行われている
不毛なやり取り

 就業先企業と派遣会社との間では、次の会話が必ずと言っていいほど繰り返される。

・「履歴書は送ってもらえないのか」に対し「送ってはいけないことになっているのでキャリアシートを送る」
・「面接はいつにするか」に対し「面接という表現は使ってはいけないので職場見学と言ってくれ」
・「職場見学は一度しかできないのか」に対し「一度しかできない」

 実に不毛なやりとりである。

 人事部の派遣社員担当者は、履歴書ならぬキャリアシートの読み方に慣れ、職場見学という表現に慣れ、スケジュール調整に長けて一人前と言われるのだ。こうしたことを覚えることが、果たして生産的なことなのだろうか。

 そもそも、この派遣就業を巡る掟の存在自体がおかしい。派遣社員からみても、就業先企業からみても、お互いによく知らないのに、就業するかしないかを判断せざるを得ないなんて滅茶苦茶である。

「正社員採用ならいざ知らず、派遣社員なのだから、そういうものだろう」と考える派遣社員もいるだろうし、「派遣社員採用に労力をかけられない」という人事部担当者もいるだろう。しかしこのことが、派遣社員の定着を阻害しているのではないか。そして実際、この掟がおかしいからこそ、前述したようなキャリアシート作成や職場見学という抜け穴を多くの企業が利用するのだ。

 私には、この掟が派遣社員にも、派遣会社にも、そして人事部にも、何のメリットももたらさないと思える。三者それぞれ、費やさなくてもよい時間と労力を負担し、あげくの果てに派遣社員の定着率を悪化させている。全国で行われている時間と労力の総和を想像すると、気が遠くなるような話だ。