先日、大阪で行われたネット証券4社による投資信託セミナーに出席した。パネルディスカッションで、司会の朝倉智也氏(モーニングスター社長)が冒頭いきなり筆者に投げかけた質問が「投資信託は日本でなぜ売れないのか」だった。
確かに、日本の個人金融資産が1500兆円あるといわれるが、投信の残高は今年9月末で約58兆円(うち株式投信約47兆円)と低迷している。筆者は、循環的な要因と構造的な要因の二つがあると思っている。
なんといっても、1990年代初頭のバブル崩壊以来、日本の株価が低迷していることの影響が大きい。近年はリーマンショックや円高の影響も付け加えることができる。投信で儲かっている人が少ないため、「投信を持っている人がうらやましい」という状態がほとんど発生することがなかった。むしろ、投信で後悔した人のほうが多い。これでは、投信が売れないのも無理はない。
投信は相場商品なので、投資家が儲かる環境がある程度続かないと販売が伸びにくい。これだけ長く続く低迷を「循環的」と呼ぶことには少し抵抗があるが、この循環的な要因は大きい。
構造的な要因は、筆者が「投信マーケティングの袋小路」と呼ぶ現象で、投信の商品開発と販売にかかわるものだ。
特に信託報酬を見ると、日本の投信は90年代に手数料が上昇した。過去にあって投信は、セールスマンが売る努力をしないと売れない商品だったし、どの商品がよく売れるかの実質的な決定者は販売会社だった。そこで、運用会社は、販売会社が自社の商品を売る気になるように手数料の高い商品を投入した。バブル崩壊後に経営が苦しいなか、販売会社も手数料の高い商品を望んだ。