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今週のキーワード 真壁昭夫

自ら変われない日本に改革を促すTPPの“外圧効果”
「よいバスか悪いバスか」は乗ってみないとわからない

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第202回】 2011年11月22日
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性急な反対議論に巻き込まれると
TPPの意義や展望が見えてこない

 野田首相がTPP交渉に参加する旨の発表を行なって以降、賛否を巡る議論が一段と熱を帯びている。

 TPPに関して様々な意見が出るのは当然だが、議論の内容を冷静に聞くと、「TPPに参加すると、日本の農業が壊滅してしまう」「参加しないと、明日にも日本が世界から取り残されてしまう」といった性急な議論が多い。そうした議論に巻き込まれると、TPPの本当の意義や展望がわかりにくくなる。

 TPP交渉のテーブルに着いたからと言って、すぐに世の中が大きく変わるわけではない。中長期的に見ると、関税などの条件交渉の進展によって、国内外の貿易に関する景色が少しずつ変化する可能性があると理解すればよい。

 そして、もう1つ頭に入れて置くべきポイントは、TPPが環太平洋地域の自由貿易圏の最終形ではないということだ。もともと、APEC(アジア太平洋経済協力)が、最終的に目指しているのは、加盟21ヵ国を巻き込んだ広範囲な自由経済圏の構築を目指すFTAAP(Free Trade Area of Asia-Pacific=アジア太平洋自由貿易圏)構想だ。

 そのFTAAPを実現するためのステップの1つが、TPPを含むいくつかの構想と考えればわかり易い。

 問題は、ここへ来て中国経済の目覚ましい台頭によって、アジア・環太平洋の経済圏の中で、米国と中国の主導権争いが顕在化していることだ。大掴みに見ると、米国は自国が主導してTPPの拡充を図り、それを最終的にFTAAPに結び付けることを構想しているはずだ。

 一方中国は、ASEAN+3(ASEAN10ヵ国に日本、中国、韓国)ないしASEAN+6(ASEAN諸国に、日中韓、インド、オーストラリア、ニュージーランド)の実現を図ることを主張し、TPP推進派の米国を牽制する動きを見せている。

 こうした状況を考えると、TPPに関する議論を、単に「農業と産業界の対立の構図の延長」と考えることは適切ではない。自由貿易圏創設における、米国と中国の主導権争いなどの要素が隠れている。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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