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今週の音盤=心のビタミン ビジネス・パーソンのための音楽案内

【クロード・ドビュッシー「子供の領分」】
世紀の不道徳ワガママ男が
放蕩の末に到達した究極の親心を表現

小栗勘太郎 [音楽愛好家]
【第9回】 2011年11月24日
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 「子供好きですか?」 

 と、大上段に聞かれたら、いや嫌いです、と答えることは想定されていない。「好きですよ」と、答えるのが大人の世界の慣わしだ。

 でも、本音では、子供は煩わしくていやだっていう人もいる。子供の相手は面倒くさい、自分に似ていると思うと嫌悪感でいっぱいになる、子育てよりも自分自身に投資したいし、自分が一番可愛い、という人もいる。欲しくなかったのに出来てしまった、という場合もある。街で臆面もなく親馬鹿ぶりをさらけ出す様を見ると、気分が悪くなる、という御仁だっているはず。

 例えば、世の常識に全くとらわれず、やりたい放題やって来た男がいる。運と才能に恵まれ、欲しいものは何でも手に入れてきた。煩悩は収まらない。色恋に目がない。仕事も自分の流儀を通す。世の無理解なんぞ気にせず、わが道を行く。派手な私生活こそ仕事の活力。子供なんか出来て家庭に収まる気はさらさらない。まさか、自分に子供なんて……。

 それでも、子供には、そんな破天荒な大人すら変えるチカラがあります。面倒くさいし、煩わしいけれど、子供は大人を素直な気持ちにさせるのです。

 そこで、今週の音盤は、ドビュッシーの「子供の領分」です。

 19世紀後半からのフランスにあって、ドビュッシーは私生活でも音楽でも世の常識に挑戦した真のアヴァンギャルドです。やりたい放題やって、自分しか愛せない男のはずでした。が、43歳にして、初めて子供を授かると、シュウシュウと呼んで溺愛、愛娘のためにピアノ組曲「子供の領分」を作曲します。ドビュッシー46歳の傑作です。

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小栗勘太郎 [音楽愛好家]

1958年生まれ、牡羊座のB型。某国立大学卒、米国滞在5年。公僕を生業とする音楽愛好家。著書は『音楽ダイアリーsideA』 『同sideB』(西日本新聞社)。『毎日フォーラム』誌にて「歴史の中の音楽」を連載中。


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ビジネス・パーソンは日夜、現場で闘って、日々、喜怒哀楽を感じる。実は音楽の現場も同じだ。だって、音楽もビジネスも、所詮、生身の人間が作る、極めて人間くさい営みだから。音楽には妙な薀蓄など不要かもしれないが、音楽が生まれる時には物語がある。それを知って聴けば、喜びが倍になり、悲しみが半分になるかもしれない。毎週1枚、心のビタミンになるような音盤を綴ります。

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