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ソーシャルゲーム「mobage」を展開するディー・エヌ・エー(DeNA)の球界参入をめぐって、反対する楽天が情報戦に打って出た。
11月22日に開かれたプロ野球の臨時実行委員会の前日、最大のライバルであるグリーがDeNAに対して、KDDIと共同で計10億5000万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。今年6月に公正取引委員会がDeNAに対して、「昨年の夏、ゲームソフト開発会社にグリーへコンテンツを提供しないように圧力をかけた」として、独占禁止法違反による排除措置命令を出したのを受けたものだ。
グリーの田中良和社長は「訴訟準備に時間がかかり、このタイミングになった」と言うが、元楽天社員で、グリー設立の際に楽天から出資を受けた経緯があるだけに、楽天-グリー包囲網との見方は根強い。
田中社長も記者会見の席で、「ソフト会社などは報復を恐れて表には出ないが、違法行為はその後も続いていると認識している。(プロ野球参入によって)違法行為をしても競争相手に勝てばいいという考えが世の中に認められるのを危惧している」と発言した。
楽天のDeNAの参入阻止姿勢は徹底しており、4時間に及んだ臨時実行委員会の席で楽天はDeNAのコンテンツが出会い系の温床となっていることや、課金トラブル、同社にインサイダー取引疑惑があることなど、1時間にわたりプレゼンした。
DeNAは横浜ベイスターズの親会社であるTBSホールディングスと株式取得については合意しているが、12月1日のオーナー会議で4分の3以上の賛同を得られなければ球界参入はできない。楽天は「青少年育成」を建前に、ネガティブキャンペーンを展開しているが、賛同者が得られていないのが実情だ。TBSが支え切れなくなっているなか、安定したスポンサーを求める声が球界内に強いが、DeNAを超える条件を提示する企業もほかにない。楽天のひとり相撲で終わる可能性すらある。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)