英EU離脱「崖っぷちシナリオ」の顕在化で、年末に世界的リスクオフも?関係者の主張が交錯する中で、英国のEU離脱交渉は一向に進んでいない。そんななか、離脱交渉をめぐる英国の「崖っぷちシナリオ」なるものが囁かれ始めた

メイ首相の表明からはや8ヵ月
英国のEU離脱交渉は進んでいるのか

 11月9日から10日まで、英国のEU(欧州連合)からの離脱を巡る第6回目の交渉が、ベルギーの首都ブリュッセルで行われた。この交渉に先立ち、英国のテリーザ・メイ首相は「デイリー・テレグラフ」紙に寄稿し、英国が2019年3月29日午後11時にEUから離脱することを表明した。もっとも第6回の交渉そのものは不調に終わり、離脱協議に関する具体的な進展はまたも見られなかった。

 続発するユーロ圏の債務問題、一部主権の移譲問題などを通じ、EUの枠組みに対して強い不信感が募っていた英国では、昨年6月に国民投票が行われ、「離脱派」が僅差で「残留派」を上回った結果、EUからの離脱が決定した。その後しばらくは、国民投票を実施したキャメロン氏が首相の座をメイ元内相に譲るなど、英国側で政権交代があったことなどから、離脱に関する具体的な動きは生じなかった。

 国民投票から9ヵ月が経った今年3月29日、英国のメイ首相がEUのトゥスク大統領に書簡を送り、英国がEUから離脱するという意思が明確に示されたことを受けて、離脱をめぐるゲームがようやく始まることになった。

 ここで英国がEUから「正式に」離脱できるまでの流れをおさらいしておくと、以下のようになる。

(1) リスボン協定第50条に基づき、英国が欧州理事会(EUの最高意思決定機関)に離脱の意思を通知。

(2) 英国とEUとの間で離脱に関する交渉(離脱交渉)を実施。英国とEUが離脱交渉で合意に達した後、将来的な通商関係に関する交渉(通商交渉)を実施。

(3) 欧州議会の同意を得て欧州理事会が最終決定。

(4) 離脱協定の発効と共に、これまで英国に適用されていたEUの条約の適用を停止。

 一連の離脱交渉の期限は2年間とされる。つまり、今年3月のメイ首相の意思表明から計算し、19年3月までとなる。現在、英国とEUのやり取りは上記(2)のプロセスにある。