大阪府知事・市長同日選挙が投開票された。市長選は、府知事を辞職して立候補した橋下徹前大阪府知事・「大阪維新の会代表」が、自民党、民主党、共産党など「既存政党」が推す平松邦夫市長に圧勝した。府知事選も、「維新の会」幹事長・松井一郎氏が大差で勝利した。「維新の会」の完勝は、橋下氏のパフォーマンスがもたらしたものではない。「大阪府構想」を提示した「維新の会」に対して、平松邦夫市長と「既存政党」が「独裁者から大阪を守る」という感情的な批判に終始したためだ。結局、橋下氏のペースに巻き込まれて、政策論争を忘れたことが敗因となった。
橋下新市長と「維新の会」は、強烈なリーダーシップが期待される反面、「独裁者」と批判される危うさがあると評される。だが、橋下新市長への批判には「誤解」が多い。今回は、府・市政の今後を考えるために「橋下政治」を再評価する。
橋下氏の「政治手法」(ハシズム)に関する誤解
――橋本氏の政策実現手続きは“独裁”か?
橋下氏に対しては、派手に政策をぶち上げ、反対する政治家や官僚を「国民の敵」とレッテルを貼って激しく罵り、市民を扇動しているとの厳しい批判がある。その「政治手法」はファシズムを捩って「ハシズム」と呼ばれる。確かに、「ハシズム」批判に妥当な部分がないわけではない。
橋下氏は「日本の政治で一番重要なのは独裁」などの、強烈な発言が目立つ。だが、客観的に見て、彼は議会制民主主義のルールを破っているわけではない。府知事選で当選して府知事となった。議会で政策を通すために、「大阪維新の会」を立ち上げ、府議会議員選挙を経て、最大多数派を形成した。「大阪都構想」実現のために、府知事を辞職し、大阪市長選に当選した。
橋下氏は政策を、常に選挙という民主主義のプロセスによって実現しようとしてきた。また橋下氏は、トレードセンター(WTC)への府庁舎移転の提案を議会で否決されたこともある。これは彼が、府議会の意思決定という民主主義の手続きも尊重していることを示している。