地方選で維新が躍進も「いずれ頭打ち」といえる理由、全国政党化へのカギを提言再選から一夜明け、記者会見する吉村洋文大阪府知事 Photo:JIJI

地方選で維新が躍進し、全国政党化に一歩近づいた。ただし、自民党に不満を持つ層をうまく獲得したのは確かだが、首都圏での支持拡大には課題が残るのが実際のところだ。一歩間違えれば、今回の地方選で振るわなかった左派野党と同じ轍(てつ)を踏みかねない。では、自民党に対抗する一大政党として、維新が全国的な支持を得るにはどうすればいいのか。他の野党が失速した要因と併せて考察する。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

維新は躍進、左派野党は衰退
背景に「自民党の左傾化」

 統一地方選挙で、日本維新の会・大阪維新の会(以下、維新)が躍進を果たした。大阪府知事・市長・府市議会を「完全制圧した」といえる好結果を出し、悲願の全国政党への脱皮に着実な一歩を進めた。

 一方、立憲民主党(以下、立民)は「与野党対決」となった北海道知事選で推薦候補が落選するなど、統一地方選全般で存在感を示すことができなかった。また、日本共産党(以下、共産党)は議席を激減させ、まさに「歴史的敗北」となった。

 今回は、統一地方選で維新が躍進し、立民・共産党の「左派野党」が退潮した意味を、日本の政治・社会の構造変化に焦点を当てて考えたい。

 この「左派野党」の退潮は、本連載で指摘してきた自民党の「左傾化」に原因があるといえる(本連載第308回)。

 どういうことかと言うと、自民党は安倍晋三政権以降、「全世代への社会保障」「子育て支援」「女性の社会進出の支援」「教育無償化」など、本来であれば左派野党が取り組むような社会民主主義的な政策を次々と打ち出してきた。

 その流れは、岸田文雄政権でより加速している。

 岸田政権は、「新しい資本主義」という経済政策のコンセプトを掲げている。その基本的な内容は、アベノミクスが置き去りにした中小企業や個人への再配分を強化することだ(第305回)。

 これはまさしく、社会民主主義的な「富の再分配」に近い。