岸田文雄内閣の支持率が20~30%台に低迷している。だが、本来ならこれを好機と捉え、「倒閣」に動くべき野党にも覇気がない。小沢一郎氏が最後の戦いに乗り出している立憲民主党は、党内の足並みがそろわない。急成長していたはずの「日本維新の会」では、馬場伸幸代表が自らの党を「第2自民党」と評する発言をし、批判を呼んでいる。両党はこれからどうすべきか。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
岸田内閣が支持率低迷も
立民は混迷、維新は「第2自民党」騒動
岸田文雄内閣の支持率が下落している。各種世論調査の中には、危険水域と呼ばれる2割台にまで落ち込んだものもある。政界の常識では、内閣支持率が危険水域を切れば「倒閣」の動きが出てくるものだ。
だが、岸田首相にはあまり危機感がないように思える。本来であれば支持率低下を「政権交代の好機」と捉えて勝負に出るべき野党側も混乱し、迷走しているからだろう。
迷走ぶりが特に目立つのは立憲民主党(以下、立民)だ。立民では、かつて自民党政権を2度倒して政権交代を実現し、「剛腕」「政界の壊し屋」の異名を取った小沢一郎氏が「最後の戦い」に動いている(本連載39回)。
小沢氏が呼びかけ人に名を連ねる「野党候補の一本化で政権交代を実現する有志の会」には、立民の衆院議員95人のうち約60人が賛同した。その背景には、立民の泉健太代表が、共産党との選挙協力を否定する発言を繰り返してきたことへの反発があるとみられる。
泉代表はこの動きを受けて、共産党との候補者調整を進める方針に転換せざるを得なくなった。だがその一方で、共産党への拒否感が強い「連合」(日本最大級の労働組合)や国民民主党との連携は進まなくなった。“全方位外交”は難しいのである。
このように、立民は党内が分裂し、迷走している印象を国民に与えている。勝負に出るべきタイミングにもかかわらず、立民の政党支持率も低迷したままだ。
また、立民に代わって野党第1党の座を奪おうという勢いの日本維新の会(以下、維新)でも、その快進撃に水を差す出来事があった。
馬場伸幸代表が今夏、「第1自民党と第2自民党の改革合戦が政治を良くする」という発言をし、波紋を呼んだのである。野党の代表が、自らが率いる党を「第2自民党」と認めたのは初めてだ。言わずもがなだが、馬場代表は党内外から厳しい批判を浴びた。
ただ実際のところ、維新は国会で「第2自民党」的な位置付けではある。憲法審査会では改憲を主張し、「改正マイナンバー法」「改正入管難民法」に賛成した。「LGBT理解増進法」が成立した際は、自民党との修正協議に応じるなど協力した(第332回・p2)。
その一方で、維新の党内には「第2自民党」であることに違和感を抱く層も出てきた。