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香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第9回】 2011年12月5日
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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

いまや社会は、
自分のこだわりを表現することが美徳となった?

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こだわっている自分をアピールできる趣味をもたなければならない?

 趣味をお持ちですか?

 皆さんはこう問われたとき、人に言えるような趣味がないと焦りや気恥ずかしさを覚えてしまうことはないでしょうか。

 「仕事、家事などに追われる毎日でも、趣味を持たなければいけない。趣味がない自分は人生をイキイキと生きていないのではないか」

 そんな強迫観念にも似た感覚に駆られ、仕事や家事以外の「私生活」を充実させることに血道をあげようとする人が多いように見えます。

 よくよく話を聞くと、どんな人でもそれなりに楽しい時間を過ごしています。

 しかし、それなりに楽しい程度では趣味とは言えず、刺激的で非日常的な楽しさを満喫できてこそ趣味と言えると思ってしまっているようです。

 しかも趣味のなかでも、人に誇れる「特殊性」も求められています。

 かつて履歴書の「趣味」の欄に書かれていた「音楽鑑賞」や「映画鑑賞」は、現代では趣味として凡庸に思われてしまっているのです。

 私の診察室に来る患者さんに、印鑑を彫る「篆刻」や植物の根を丸くしてその周りに苔を貼る盆栽の一種「苔玉」を趣味にしている人がいます。

 それなりに楽しんでいるようですが、一方では息苦しさも感じているといいます。

 最初は気晴らしだったのに、より洗練されたマニアックな趣味にしなければならないと仕事以上に厳しい姿勢で臨むようになった。やるからにはとことん追求し、どうせ趣味なんだから適当でいいやといういい加減な姿勢は許さない。

 自分に対する要求水準が高く「こだわり」を持たないと気が済まない。そしてそれを他人に認めてもらうことまで追求するあまり、ストレスを溜め込んでいるのです。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「ほどほど論」のススメ

好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

「香山リカの「ほどほど論」のススメ」

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