金融庁が検討している「FX(外国為替証拠金取引)レバレッジ規制」の強化に注目が集まっている。現在の規制の上限は25倍だが、金融庁がこれを10倍まで引き下げようとの検討を進めているからだ。こうした規制強化には反発の声が大きい。(ダイヤモンド・オンライン編集部 松野友美)
金融庁による締め付けで
危険な海外業者に流れる個人投資家
個人投資家の岸田雄介さん(仮名)は、日本のベンチャー企業のマーケティング責任者を務めている。しかし、夜の顔は、FXで巨額の利益を挙げた投資歴10年以上のやり手投資家だ。一時は50億円もの利益を挙げたこともある。「『秒速で1億稼ぐ』とドヤ顔していた若手経営者がいましたが、あの感覚が分かりました」とさらりと言ってのける。
岸田さんの専門は「海外FX」だ。外国為替の変動を利用して差額を儲けるFXを、日本の業者ではなく海外業者を通じて取引している。
FXでは、あらかじめ業者に「証拠金」を支払えば、その数倍の金額を取引することができる。これをレバレッジ効果といい、レバレッジをかければ少ない元手で多額の収益を得ることができるため、小遣稼ぎとして主婦やサラリーマンに大人気だ。ただし、為替が急変し、入金済みの証拠金を上回る損が出た場合には、追加の証拠金を業者に支払わなくてはならない。
日本では、金融庁に登録した業者との相対取引「店頭取引」と、金融庁直轄の東京金融取引所(金融取)で行う「取引所取引」の2種類があるが、投資家の中には岸田さんのように海外業者を使う人もいる。なぜなら、国内2種のレバレッジは最大でも25倍だが、海外には888倍や1000倍の業者もあるからだ。
当然、甘い話には裏がある。海外業者は日本の金融庁の管轄外であり、安全性が担保されていない。利益を出しても取引口座から資金を引き出せなかったり、業者が投資家に「不正取引」などの理由をつけて口座を凍結したりすることもある。業者が突然つぶれてしまい、入金した証拠金が取り返せなくなるといった被害も出ている。
実際、岸田さんも、モンゴルの業者に3000万円入金していた口座を凍結されたり、スイスの金融危機に巻き込まれたオーストラリアの業者がつぶれて5000万円が取り戻せなくなったりするなど、痛手を負っている。岸田さんのように投資経験が長く、投資資金も多額な人はそれでも持ちこたえられるが、泣き寝入りする個人投資家も後を絶たない。
投資はあくまで個人の責任の範疇。とはいえ、レバレッジが大きいとギャンブル性も高くなる。そこで日本の業者には、金融庁が「最大25倍まで」(証拠金が取引額の4%以上)という規制を課している。