1億円のがん治療薬を100歳の患者の1日延命に使うべきか

「人命は地球より重い」という言葉がある。人命を救うためなら、いくらでもコストを惜しむべきではない、という意味だとすると、それは危険な概念だ。少数の人を救うために巨額のコストがかかり、多くの人が「人命の重さ」に押しつぶされてしまう可能性があるからである。今回は、大変重い課題であるが、「自助」と「公助」の線引きについて考えてみたい。

数千万円するがん治療薬が
相次いで発売され始めた

 オプジーボというがんの治療薬を巡り、異例の薬価引き下げが行なわれた事は記憶に新しい。当初の薬価では、患者1人当たりの年間治療費が約3500万円かかるはずであったが、保険財政を揺るがしかねないということで2017年2月に薬価が半額に引き下げられたのである。

 この件は、値下げが異例のタイミングで行われたがゆえに注目されたのだが、思えばこれは高額の薬が相次いで発売される“前兆”だったのだろう。