下町情緒の残る根津の人気店「よし房・凛」。高い製粉技術と粉を扱う職人技が作り出す「蕎麦の刺身」「蕎麦味噌の春巻き」「揚げ蕎麦掻き」は出色。蕎麦料理独特の手仕事が光る。「茄子じるせいろ」「ごぼう天そば」など種物の人気も高い。下町の粋な仕事を肴にゆっくりと飲みたい店だ。

開店初日から客が押し寄せた人気店は
落ち着いた雰囲気が、根津の下町情緒によく似合う

根津「よし房・凛」――蕎麦料理独特の手仕事が光る。下町風情の味わいを肴にゆっくりと飲みたい1900年余前、日本武尊が千駄木の地に創祀したと伝えられる根津神社。3000株のつつじ庭園で有名。境内近くの金太郎飴、かりんとう、鯛焼きの店に顔を出すのが楽しみ。

 下町情緒の残る文京区と台東区の一角を、”谷根千”(やねせん)と呼ぶようになったのは随分前のことだ。

 谷中、根津、千駄木をルートとして、有名墓石やギャラリー、カフェや飲食店を訪ね歩く。フェイスブックやツイッターの素材として、パン工房や折り紙屋を携帯で撮って送るにはうってつけのようで、ここ数年特に人気が出た。

 日暮里あたりからでは陶磁器店やリサイクルの布切れの店を覗きながら、路地の奥に隠れた店を探しながらのんびりと歩く。その終着地点が丁度、つつじ庭園で人気の根津神社あたりになる。

 その根津神社交差点にあるのが「よし房・凛」。散歩で小腹が空いた人たちがまるで駆け込むようにして入っていく。

根津「よし房・凛」――蕎麦料理独特の手仕事が光る。下町風情の味わいを肴にゆっくりと飲みたい「よし房・凛」。根津の町に昔からあるような雰囲気。休日には店の前までに客が溢れるほどの人気だ。

 今から8年前の平成15年に開業・初日からどっと客が押し寄せて、連日瞬く間に蕎麦が売り切れた。「1ヵ月は店に泊り込んでいました」と店主の山梨善一さんがその頃を振り返る。

 当初は昼と夜との営業のはずだったが、あまりの混雑ぶりに1ヵ月はお昼だけの営業にしたそうだ。そのくらい、「よし房」の開店は話題になった。以来、ずっと人気店の道を歩いてきた。

根津「よし房・凛」――蕎麦料理独特の手仕事が光る。下町風情の味わいを肴にゆっくりと飲みたい店内は落ち着いた茶系色でまとめられ、ゆったりと客が過ごせるような設計だ。打ち場にはその日の蕎麦の産地表示が。産地を知って食べる蕎麦はまた格別だ。

 13坪の店内に席は16席しかとっていないから広く感じる。和風モダンが流行った当時に、とんがった設計を避けて、日本人が好むような落ち着きのある造作にした。根津の下町情緒によく似合っている。