一般的なBPOに見られる二つの課題
近年、経理や人事など間接部門の業務負荷が急増している。背景には取り扱う情報の多様化と増大がある。財務情報はもちろん、非財務情報の開示に関する法規制も厳しくなっている。
その一例が、2023年3月から義務化された人的資本の情報開示。人材育成や従業員エンゲージメントなど多岐にわたる項目について、調査結果などを公表しなければならない。ESG情報開示のルールについても強化される方向だ。
「人事や経理などの部門は日常業務に忙殺されており、戦略的な業務や思考に割ける時間はますます削られています」と指摘するのは、ビジネスブレイン太田昭和(以下、BBS)で取締役常務執行役員グループBPO統括兼BPO統括本部長を務める杉野敏也氏である。
ビジネスブレイン太田昭和取締役 常務執行役員
グループBPO統括 兼 BPO統括本部長
杉野敏也氏
間接部門の業務負荷が高まる中で、今改めてBPOへの関心が高まっている。
日本でBPOが普及し始めて数十年。特に2000年代には、中国などのオフショア拠点でのBPOを利用する企業が増えた。主たる目的はコスト削減だ。できるだけ業務プロセスを標準化し、コストの最小化を目指すというモデルである。
しかし、全ての間接業務を標準化するのは得策とはいえない一面がある。
「標準化による効率追求は理にかなっていると思いますが、全ての間接業務に適用できるわけではありません。間接業務の中には、差別化につながる独自プロセスもあります。そうした個社要件をいかに見極めるかが重要です。私たちは標準化と個社独自プロセスを組み合わせたBPOを提供しています」と杉野氏は話す。
もう一つ、BPO事業者に任せると業務の中身が見えにくくなるという課題もある。杉野氏はこう続ける。
「詳細な業務プロセスが見えなければ、次の変革や改善は難しくなります。これが、現在行われているBPOの大きな課題です」
その観点で今後問題化しそうなのが、AI活用である。業務プロセスを外部化した場合、自社の意向に沿った形でのAI導入は難しい。BPO事業者がAIを導入することはできるが、それは自社最適とは言い難いものになるかもしれない。
これまで、企業がBPOに求めるのはもっぱらコスト削減だった。しかし、経営戦略上、あるいは中長期的に見て、今の状態を続けることは望ましいだろうか。BBSの提示するユニークなBPOモデルは、そんな問いを投げ掛けている。
可視化と専門知識に強みを持つBPO
BBSは、BPOというサービスが一般に知られる以前からBPOビジネスを手掛けてきた。現在では国内10拠点のBPOセンターを中心に、多くの企業の業務を受託している。
オフショアBPOにおいてサービス品質などの課題が顕在化しつつあった14年、BBSは「新BPO宣言」を発表した。国内BPOセンターをベースに、高付加価値なBPO提供を目指すという姿勢を鮮明に打ち出したのである。それを具現化したサービスの一つが、経理・財務、人事・給与の領域で提供されている「High Value BPO」(図1)だ。その特徴について、杉野氏はこう説明する。
図1 「High Value BPO」の概要拡大画像表示
「まず、BPOに際しては業務プロセスの可視化を徹底します。長年にわたって業務プロセスの変更を繰り返して複雑化していたり、グループ会社で独自プロセスが使われていたりすることもあります。業務やシステムが複雑化しているケースは少なくありません。しかし、今後のAI導入などの変革を想定すれば、どこかのタイミングで業務の複雑性を解きほぐし、可視化する必要があります。当社のBPOは、そのきっかけにもなります」
もう一つの特徴はBBSの備える専門性である。同社は幅広い分野の専門人材を多数擁しており、多方面からのコンサルティング、アドバイスを提供することができる。
「例えば、お客さまが既存業務を変革したいとき、当社に蓄積された類似事例の情報が役立つはずです。また、特定業務領域に関する世の中のトレンド、関連する法規制の動向をお知らせすることで、変革をサポートすることもできます。変革の方向性を決めるのはお客さまですが、BBSはその計画策定や実行を強力に支援しています」
業務の可視化によって次の変革が可能な環境を用意し、実際に変革を進めると決まれば、専門的な知識でその取り組みを支える。このようにして、BBSのHigh Value BPOは企業に対して持続的な価値を提供している。テクノロジーを駆使した業務改善、変革を長期的に支える土台づくりを目指す企業にとって、High Value BPOの提供する価値は大きい。
給与計算に個社最適を適応したJALの狙い
BBSが提供するBPOサービスによって、すでに成果を上げている企業も多い。
日本航空(JAL)は、新たな給与計算システムの構築およびその運用業務のBPO化でBBSのサービスを活用した。
「JALにおける課題は給与計算業務の負荷でした。JALはBPOによる負荷軽減で生み出した余裕を生かして、独自の社内システム整備などを進めています」と杉野氏は語る。
給与計算業務におけるJALのユニークさは、パイロットやCAのフライト実績が給与に反映されることだ。乗務時間などを勘案した上で給与計算を行う。
「いかに公平なシステムをつくり、従業員の納得感を高めるか。給与計算システムには、JALならではのノウハウが詰め込まれています。モチベーションやエンゲージメントにも響く給与計算は、個社最適を追求する価値のあるシステムといえるでしょう」
一般に、給与計算は企業ごとの個性が少ない業務とみられており、標準化された業務をパッケージソフト上で実行している企業は多い。しかし、JALのように給与計算で個社最適を目指す企業もある。冒頭で杉野氏が述べたように、間接業務の中にも差別化要素が含まれる場合があるのだ。
JALの事例では、BBSは給与計算システムの構築の他、同システムと他システムとの連携機能開発も担った。人事管理システムとの連携、運航管理システムとの連携などである。
「当社はコンサルティングやシステムインテグレーションなどの事業も展開しており、システム開発も得意。JALに対しては、初期段階ではさまざまな角度からの検討に参加し、システム開発を担い、BPOサービスを提供しました。BPOの運用フェーズにおいても、私たちはお客さまに伴走し、さまざまな改善施策を重ねています」と杉野氏は言う。
BBSの掲げる「BPOプラットフォーマー構想」
もう一つの事例は、オリンパスである。同社は長年の経営の結果、多くのグループ会社を擁している。各社が独自で人事制度などを手直ししてきた歴史もあり、グループ全体で見ると制度と業務、システムの複雑性が高まっていたという。
「当社は検討段階からプロジェクトに参画し、制度のシンプル化検討を含めさまざまな形で支援を提供しました。BPOの検討を進める中で、ベースとなる給与支払いや社会保険手続きは会社間で統合するが、制度が大きく異なる退職金制度や、地域によって取引先金融機関が異なり、それに応じて業務フローが異なる財形貯蓄などは統合しない方が合理的である、といった方向性が見えてきます。お客さまと議論を重ねる中で、妥当な着地点を見いだすことができました」と杉野氏は振り返る。
オリンパスにおいても、BBSは業務やシステムを可視化した上で、専門知識を生かしたサービスを提供。そうしてBPOサービスに引き継いだ事例である。
企業においてBPOが果たす役割は今後ますます大きくなっていくに違いない。そうした将来を見据え、BBSは「BPOプラットフォーマー構想」(図2)を掲げている。
図2 BBSが掲げる「BPOプラットフォーマー構想」拡大画像表示
「経理や人事という業務が好きな方、これらの専門知識を深めたいと思っている方を集めて、一種の業務プラットフォームの構築を目指しています。例えば、現在企業の人事部門で働いている社員は、その企業の人事業務を知ることができますが、他の業界や企業の人事業務には詳しくありません。そのような方々がプラットフォームに参加すれば、多くの企業の人事業務に関わることで、専門知識をさらに深めることができるでしょう」
分厚い専門知が集結するプラットフォームがあれば、利用企業にとっても心強い。杉野氏は「道半ば」と言うが、BBSは経理のプロや人事のプロが集積するプラットフォーマーへの道を一歩ずつ歩んでいる。
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