厚生労働省の発表によれば、今年7月時点での全国の生活保護受給者は、205万495人と過去最多になったという。この報道とセットで語られるのが、「不正受給」の問題だ。「不正受給が増えているから、生活保護費が膨れ上がり、国や自治体の財政を圧迫しているのだ」という論調が、世間に広まっている。しかし、生活保護受給者の増加は、本当に「不正受給」や受給者の怠慢ばかりが原因なのだろうか。報道の裏に隠された受給者の実態を探ると、これまで定説のように語られていた「受給者悪玉論」が、一面的なものの見方に過ぎないことがわかってきた。(取材・文/プレスラボ・小川たまか)
「戦後最大」「過去最多」の生活保護
不正受給報道の裏に隠れた興味深い議論
「生活保護受給者、戦後最大の205万495人に」
厚生労働省の発表によれば、今年7月時点での全国の生活保護受給者は、205万495人に達し、過去最多となった。「戦後最大」の4文字に、眉をひそめた人も多いだろう。
追い打ちをかけるように、今月6日には、8月時点での受給者がさらに9376人増え、2ヵ月連続で過去最多を更新したことも発表された。それに関連して、とりわけ問題視されているのが、各自治体が発表する「不正受給」の件数が増えていることだ。
「不正受給が増えているから、生活保護費が膨れ上がり、国や自治体の財政を圧迫しているのだ」という論調が、世間に広まっている。
この論調を裏付けるかのように 12月1日には「生活保護を受けているのに高級車に乗っている人がいる」と通報を受けたことから、ある受給者が生活保護費を搾取していたことが発覚し、逮捕に至った事件が報道された。
これらの報道に関する街の声を聞くと、生活保護受給者へ向けられる視線は、日に日に厳しくなっていることがわかる。
「真面目に働いている人が損をして、生活保護を受給する人が得をするような仕組みはおかしい」(20代男性)