例年より2ヵ月遅れで、今年も大学卒業予定者の就職活動が始まった。就職率が低迷する中、学生は良い職を得ようと会社説明会に参加している(勉強がおろそかになるのは困ったものである)。一方、企業の人事担当者は、良い人材を確保するために、しばらくの間、多忙な毎日を送ることになる。

 応募者の能力が分かれば、人事担当者の仕事は容易である。しかしながら近年では、学生は就職セミナーに参加し、企業のOB(彼らのほとんどは人事畑を歩んでいる)が作った想定問答をこなした上で、就職活動に臨んでいる。このような準備万端な応募者を篩(ふるい)にかけるのであるから、人事担当者も大変である。

大学の勉強は役立たないと言うのに
なぜ大卒の賃金は高卒より高いか

 新卒者の採用に際しては、一昔前よりは重要度が下がったとはいえ、応募者の「学歴」が、今でも採否を決める一つの要因となっている。実際、エントリーシートに大学名の記入を求めない企業もあるが、そのような企業でも、面接の際に出身大学を尋ねることが多いようである。なぜ、学歴が採用基準となるのか?今回は、そのメカニズムについて考える。

 同窓会などで企業に就職した友人に会うと、彼らは異口同音に「大学で勉強したことは会社の中では役に立たない」と言う。とはいえ企業は、大卒者にたいして、高卒者よりも高い賃金を支払っている。このことはいかに説明されるのか? 

 企業の人が言うように、企業人にとって必要な能力は「勤勉さ」と「協調性」であるとしよう。一流大学に入学する人の多くは、子どもの頃から真面目に勉強しており、「勤勉さ」は入学前から備わっている。その意味で、大学生活を送ることによって「勤勉さ」が向上するわけではない。