11月下旬、東日本大震災の被災3県(岩手・宮城・福島)で、復興道路の着工式や説明会などが相次いで開催された。なにしろ総工費は3県合わせて1兆4100億円。過去10年間、公共事業費は減少し続けており、久びさの巨大案件の誕生となる。
具体的には、三陸沿岸道路と宮古盛岡横断道路、東北横断自動車道釜石秋田線、そして東北中央自動車道の4道路の整備を指し、今回の震災を受けて新規事業化区間が合計224キロメートル増えた。
現在、検討が進められている高台移転ともリンクし、主に高台地域を通る設計としているほか、再び津波が来たときには、避難道路としても重要な役目を果たすと期待されており、「命の道」というスローガンも誕生している。
復興という位置づけとはいえ、国の予算でインフラを整備できるとあって、3県では知事自らが会合で熱弁を振るうなど、復興道路事業にかける意気込みはハンパではない。
しかし、先行きは決して「安泰」とは言いがたい。
第1に予算。国の第3次補正予算では予算が付いたものの、道路の整備事業では通常、前半よりも後半のほうがカネが必要になる。
復興道路の完成は、7~10年を目標としているが、物入りとなる後半戦にきちんと予算を確保できるかどうか、不安の声が上がっている。
3県それぞれで開かれた復興道路会議でも、予算の確保や、早期完成に向けての「スタートダッシュ」の重要性が強調された。
第2に、資材や人材の不足。被災地では、復興道路以外にも、港湾や防波堤の整備、住宅整備や高台移転など、これから少なくとも3年間は復興のための公共工事がめじろ押しとなる。
すでに被災地では、人件費や資材価格の高騰が始まっており、「土嚢も生コンも、そして道路に使う鉄板も、すべてが足りない」(地場建設業者社長)状態だ。
来年以降、復興関連工事が本格化すれば、さらに需給が逼迫することは想像に難くない。はたしてスケジュールどおりに復興道路の整備が進むかどうか。
また、復興の青写真そのものにも疑問が残る。
現在、被災地では雇用保険で食いつないでいる人も多く、地元商店や工場の復活はあまり進んでいない。巨額の復興予算が付いても、地元にカネが落ちない状況が続くようでは、さらに被災地からの住民流出が進んでしまう。
箱モノやインフラの整備ばかりに血道を上げれば、気がつけば住む人がいない街ができたというオチが待っているかもしれない。巨額の公共工事にわく一方、将来の不安をぬぐい去れない地元の声も根強く存在しているのが現状だ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 津本朋子)