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日本総研 「次世代の国づくり」

事業者と市民を結ぶ小口出資のスキームこそ
東北地域の「生業(なりわい)の復興」に有効だ
――創発戦略センター副主任研究員 田嶋亨基

田嶋亨基 [日本総合研究所 創発戦略センター 副主任研究員]
【最終回】 2011年12月12日
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「生業の復興」のための
資金が足りない

 震災から9ヵ月が経ち、当然ながら東北被災地の現場ニーズも変化している。震災当初は、「生命の確認」が目下の課題であり、震災から1ヵ月が経過する頃は、衣食住の確保、つまり「生活の維持」が最大の課題であった。しかし、半年が経過する中で、喫緊の課題は将来の安定した収入源となる「生業(なりわい)の復興」に、焦点が移っている。

 被災地の生業復興を遂げるにあたり、食農分野の再生は最も重要といえる。全就業者に占める食農分野の従事者割合は、全国平均11%に対し、東北各県は14~19%と高い。被災地の生業や雇用を復興するにあたり、被害度合や依存度の高い食農分野における事業再生は不可欠なのだ。

 生業復興、すなわち事業再生において最大の課題は、用地・資金・販路の三つの資源を確保できるかどうかだ。そのうち、用地確保に関しては、11月10日に多くの自治体において建築制限か解除され、この課題は漸減する見込みだ。一方、資金確保と販路確保という、直接キャッシュフローに関わる課題は、いまなお、被災事業者にとって深刻な課題となっている。

 資金調達の手法には、「補助金・義援金」「融資」「投資」の主に3種類があるが、官主導の前者二つには限界が生じている。これまで執行された1次補正と2次補正では、事業規模と事業体数の両方に対して、金額規模が全く足りていない。日本政策金融公庫等を通じた資金繰り支援や無利子融資も施されているが、2重ローンや、実質的な補助残融資(対象事業費から補助金相当額を差し引いた額に対する融資)という制約ゆえ、現場ではあまり機能していない。

 一方、持続可能な事業再生に必要な販路確保に対しても、国は、中小企業基盤整備機構や全国商工会連合会等と連携して、販路や販売量が減少している事業者向けに、新たな販路創出やビジネスマッチングの支援措置を講じているが、具体的内容は、イベント出展料の免除や、1件当たり30万円を限度とした助成などに留まっており、効果は限定的といわざるを得ない。

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田嶋亨基 [日本総合研究所 創発戦略センター 副主任研究員]

たじま こうき/1980年生まれ、2006年3月東京大学大学院農学生命科学研究科修了、4月農林水産省入省、農地法改正・企業参入等の業務担当。2008年日本総合研究所創発戦略センター入社。一貫して農業・食品のコンサルティング業務に携わり、農産物卸の社外ベンチャー設立。震災後は東北1次産業の事業再生支援に注力し、現職に至る。


日本総研 「次世代の国づくり」

日本はまさに歴史の転換点にたっている。この認識に立ち、日本総研は2009年より「次世代の国づくり」をテーマに活動している。その活動の一環として09年3月より報道関係者を対象とし、勉強会を開催してきた。本連載は11年度に開催する勉強会の内容を基に、日本総研の研究員が総力を結集して、次世代の国づくりに向け、多岐にわたるテーマを提言していく。

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