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「生き証人」が語る真実の記録と教訓~大震災で「生と死」を見つめて 吉田典史

「がんばろう!」と言われてもこれ以上がんばれない
被災者・遺族を包む“無邪気で残酷な空気”の正体

――筆者が取材で出会った被災者や遺族のケース

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第17回】 2011年12月13日
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 この連載は、次回が最終回となる。今回は、私が被災地を11月~12月にかけて訪れたときに感じたことを、紹介したい。

 早いもので、2012年3月で震災発生からちょうど1年が経つ。この年末から来年3月にかけて、被災者・遺族の生活や意識は、大きな曲がり角を迎える時期にさしかかる。大震災が発生した今年が暮れようとしているなか、これから私たちがするべきことを考えてみた。


「あの体育館には死人の霊が出る」
駅前の喫茶店で聞いた耳を疑う噂

 「あの体育館には霊がいる、と聞く。津波で死んだ人の霊だ。近寄らないほうがいい……」

 3週間ほど前、東北新幹線のある駅前の喫茶店で、そこの主人や数人の客からこんなことを言われた。私が「これから、陸前高田市(岩手県)に向かう」と話したときだった。

 さらにこうも聞いた。

 「夜、あの市内を歩く際には注意をしたほうがいい。海岸沿いのホテルの跡地には、亡くなった人の霊がたくさん集まる。霊は水辺のところを求める。朝になると、霊は体育館や市役所のほうに戻る」

 彼らが言う「体育館」とは、前回の記事で紹介した陸前高田市の市民体育館を意味する。また「市役所」とは、その数百メートル横にある、津波で破壊された市役所を指す。震災当日、この一帯で少なくとも数百人の人が亡くなっている。

 地元の消防団員らによると、地震直後、この体育館には地域の住民300人ほどが避難した。しかし、天井近くまで高さのある津波が押し寄せた。壁を押し破るほどの破壊力だった。中にいた住民らは波に飲まれ、もがき、亡くなった。数人が助かったものの、200人ほどが今なお行方不明になっていると言われる。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


「生き証人」が語る真実の記録と教訓~大震災で「生と死」を見つめて 吉田典史

震災から5ヵ月以上が経った今、私たちはそろそろ震災がもたらした「生と死の現実」について、真正面から向き合ってみてもよいのではなかろうか。被災者、遺族、検死医、消防団員、教師、看護士――。ジャーナリストとして震災の「生き証人」たちを詳しく取材し続けた筆者が、様々な立場から語られた「真実」を基に、再び訪れるともわからない災害への教訓を綴る。

「「生き証人」が語る真実の記録と教訓~大震災で「生と死」を見つめて 吉田典史」

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