短所を聞かれたら、正直に答えるべきか

  履歴書の欄にも、長所とともに短所を書く欄のあるものがある。
  「君の短所は何ですか?」
  というイヤミな質問をぶつけられることもある。

  せっかく売り込みに行っているのに、とがっかりすることはない。
  そういうときはどうするか。
  短所を言うふりをして、長所を言えばいいのだ。

  「私の短所は、とにかく運が強すぎることです」
  「私の短所は、必要以上にひと手間かけてしまいすぎることです」
  といった具合に考える。言ってることは、ちっとも短所ではないのだ。
  単に、「私の短所は」で文章が始まっているだけなのだ。
「私の短所は……すぎることです」

  もう一度注意しておくが、これは〈考え方〉であって、こういう言い方をしろという〈決まり文句〉では決してない。『メンタツ』に〈決まり文句〉は1つもない。
  「……すぎる」というそのままの言い方をして、落ちた先輩が大勢いることを忘れるな。
  「ガンコ」と言えば、「……すぎる」という言い方ではないが、短所を言うふりをして補足説明で長所にすることができるということだ。ひどい人になると、例に挙げた「手間をかけすぎる」とか「運が強すぎる」をそのまま暗記して面接で言う人がいる。

  『メンタツ』の中で例に挙げたものは、考え方の説明に挙げたわけであって、暗記しろということではない。それを、暗記して言ってしまう人が大勢いるので、そのまま使うと落ちると思ってもらってよい。「ガンコ」もこれで使えなくなった。自分の頭で考えること。
  短所を聞かれて長所を言えば、面接官に度量があるなら、図々しいけど面白い、と笑ってくれるはずだ。面接においては、図々しいぐらいでちょうどいいのだ。「図々しい」というのは、ほめ言葉なのだ。
  それぐらいでイヤミにとられるとしたら、そんなこととは関係なしに、その人間自体が、イヤミなキャラクターなのだから、答え方ぐらいではどうにもならない。

  短所を聞かれて、バカ正直に、「そそっかしいところです」「お調子ものです」と答える人も多いが、正直に言ったからといって、自己分析力があるというふうに好意的には見てくれない。なんの疑いもなく、面接カルテに「そそっかしい」「お調子もの」と書かれてしまうだけだ。日常会話では、「そそっかしい」も「お調子もの」も、好感が持てるという意味で、ほめ言葉だが、面接では、「ビジネスマンには向かない」という意味になるのだ。
  1次、2次、3次と面接が進んでいくと面接官はかわっていく。ということはどういうことかと言うと、面接カルテに「そそっかしい」と書かれると、志望者が、謙虚に言ったにもかかわらず、それを読んだ初対面の面接官は、「なにか、前回の面接でそそっかしいことをしたんだな」と思ってしまう。

  「あなたの不得意学科は何ですか」という質問もイヤガラセの質問だ。
  「英語です」と正直に言ってしまうと、カルテに書かれてしまうのでシャレにならない。
  「コツコツ覚えることが苦手です」と言うとマジメさに欠けると思われる。
  「答えが1つのものより、答えがたくさんあるものが得意です」
  というように、「……より、……のほうが得意です」と言えば前向きだ。

  「どうして浪人したの」ということも答えにくい。
  「どうして留年したの」
  「どうして優が少ないの」
  「どうしてゼミに入らなかったの」

  という質問も同じだ。面接では、浪人より、留年のほうが理由を突っ込まれる。
  出席態度が悪いのではないかと思うからだ。

  誘導尋問に引っかかって、「出席チェックが厳しくて」と言うと、やっぱりマジメでないということになってしまう。会社に入っても、遅刻の常習犯になるだろうと考えるのである。
  浪人や留年について聞かれたら、その原因ではなくて、そういう代償を払ってまでも得た成果を言うのだ。それが自己PRになるのだ。

面接では、謙遜は美徳ではない。
短所を聞かれたら、短所を言うふりをして長所を言う

 

*第2回は、第2章「自己紹介で通る人 自己紹介で落ちる人」から一部を掲載しました。(第2章には、このほか、「あんなに笑ってくれたのに、どうして落ちたのだろう」「自己PRで卒論の話は不利か」「『同好会の幹事をやっていた』というのは有利か」「『広告研究会をやっていた』というのは有利か」「『アルバイトをいっぱいやりました』というのは有利か」「『勉強ばっかりしてました』というのは不利か」「マスコミ以外の会社でも、積極的にアピールすべきだろうか」の項目があります)

*連載の第3回(12/22)は、「志望動機で通る人 志望動機で落ちる人」をお届けします