「私の投資に関心のある人は手を挙げて!はい、そこのあなた、どうぞ!」
「私の業界は不動産なんですが」
「不動産?あ、ダメダメ。もう関心ないね。そっちのあなたはどんな業界?」
「鉄鋼関連?もっとダメじゃないの。不動産が悪ければ鉄鋼だってよくないでしょう」……。
上海で12月、投融資管理の専門家X氏を囲んでの交流会があった。精華大学客員教授の名刺を持ち、中国の金融業界や企業に向けて改革の必要性を発信するX氏の講演には、業界、企業の国有・私有、規模を問わず多くの中国人経営者が集まった。
上記のやりとりは、X氏がこれと見込んだ企業に投資しよう、次なる「成功企業」を発掘しようという目論みで行われたものだが、そこからはすでに不動産業界が冷え切っていることが伺える。
濡れ手に粟も今は昔
死活問題に直面する不動産業界
確かに不動産業界の苦境は察するに難くない。2011年11月、上海の住宅販売戸数は過去6年の最低水準にまで落ち込んだ。同月の販売成約面積は49.13万平米、前年比29.8%の下落である。住宅価格はここ半年、2万元台(1元=約12円)で推移、微増微減を繰り返しているが、物件によっては2割近く落ちたところもある。あれほどボロ儲けしてきた不動産業界が、今まさに「死ぬか生きるか」の難題を突きつけられているのだ。
振り返れば09年、中国全土が不動産バブルに沸いた。市井の話題は住宅購入一色に染まり、インフレ対策と「今を逃せば一生買えない」という焦燥感から、多くの市民が買いに走った。住宅価格の全国平均は前年比24.9%も値上がりし、住宅価格は空前の高値をつけた。
2010年、中国政府はこの過度な値上がりを抑え込もうと、複数回にわたりマクロ調整策を出した。にもかかわらず、市場の過熱は収まらなかった。当時、投資家も、デベロッパーも、仲介業者も、そして消費者も政府の足元を見透かしていた。不動産市場に対する調整策がいずれ経済に影響するとなれば、政府はその手綱をすぐに緩めるだろうと踏んでいたのだ。