12月8日の欧州中央銀行(ECB)理事会と、9日まで2日間にわたって行われた欧州連合(EU)首脳会議は、欧州債務危機の行方を決める最重要会合として注目を集めた。ある程度は危機対応の進展が見られたものの、足元の火種であるギリシャや周辺の重債務国、さらには欧州の銀行の資金繰り危機は去っていない。
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なりふり構わぬ対応は、凍てつく債券市場に対する強い危機感の表れだった。
「ついにここまで広げたか」
12月8日、欧州中央銀行(ECB)が0.25%ポイントの利下げに踏み切ったのは市場の予想どおり。より驚きをもって受け止められたのは、銀行に資金を供給する際に要求する適格担保の範囲を、住宅ローンや中小企業向けローンにまで拡大したことだった。
この流動性支援策は、これまで担保要件を国債や格付けの高い証券化商品などに限っていたことを鑑みれば、異例といえる寛大な対応だ。逆にいえば、それほど欧州の銀行が今、資金繰りに窮した危機的状況にあることを示している。
欧州銀の多くは2012年1~3月に無担保債償還のピークを迎える。しかし11年夏以降、無担保債市場で資金調達できず借り換えもままならない状況が続いており、破綻の可能性が高まっている。いまや、「3ヵ月物の短期社債ですら有担保でしか発行できない」(市場関係者)という厳しい状況だ。
資金繰りの危機に直面している背景には、ギリシャやイタリアなど重債務国の国債を大量に抱え込み、国債価格の下落で損失が拡大、軒並み資本不足懸念に陥っていることがある。そのため自身の信用力が低下し、資金調達コストが高止まりしているのだ。
焦るECBは、担保範囲の異例の拡大に加え、3年物の長期資金供給まで新たに実施すると発表。なにがなんでも金融システムの麻痺を未然に防ぐべく、銀行に対する強固なセーフティネット(安全網)をぶち上げたのだ。