早いもので今年も年末を迎えた。今回は毎年恒例の来年2012年における住宅・不動産の「買い時診断」を行なってみたい。
振り返れば、2010年後半から住宅の「買い時感」は高まりつつあった。低金利が続いている上に過去最大の住宅ローン減税、贈与税非課税枠拡大などの政策効果で、3大都市圏を中心にマンションや戸建ての販売が回復。ここ数年、苦境に立たされていたマンションデベロッパーも都心部を中心に素地取得の動きを再び活発化し始めており、2011年は住宅市場の回復がより鮮明なものになるというのが、大方の予測であったのだ。そんな折、発生したのが3月11日の東日本大震災だった。
3.11東日本大震災の影響は
どれほどあったのか?
実際、この東日本大震災は住宅市場にどのような影響を与えたのだろうか。一般的には、震災以降の住宅需要は急激な冷え込みにより供給が悪化したとのイメージがあるが、実際のデータを見るとそれらを裏付ける数字はあまり見えてこない。もちろん、震災直後しばらくは湾岸の高層マンションや海抜の低いエリアにおける住宅需要が減退したことは事実だ。しかしながら、図1の通り、供給そのものは震災以前と以後ではそれほど大きく変わっていないのである。むしろ6月以降は再び供給数が拡大傾向にあり、7月、8月は久しぶりに(約3年ぶり)月次の新設住宅総計が2ヵ月連続で8万戸を超えた。
これらにはいくつか要因が考えられるが、購入者の立場からみれば、震災による住宅購入に関する心理的買い控え以上に、住宅ローン減税や低金利といった住宅投資を取り巻く有利な経済的環境が強かったといえる。