牛丼の「すき家」を展開するゼンショーが前代未聞のアフリカ支援に乗り出した。ソマリアからの難民が押し寄せるケニアに牛乳供給網を自ら構築してしまったのだ。
長く紛争が続くソマリアで、2011年6月に大干ばつが発生。約240万人のソマリア国民が食べ物や安全を求めて、難民となった。さらに、南部の子ども67万人のうち3分の1が重度の栄養不良に陥った。
ソマリア難民の多くが向かった先が、隣国、ケニアだった。ケニアのダダーブ難民キャンプには、すでに20万人が滞在していたが、さらに30万人が押し寄せたのだ。
キャンプでは餓死や病気が発生。しかも、ソマリアの武装集団の一員が難民に紛れたり、国境を越えケニア国内で外国人を誘拐するなど治安も悪かった。
このニュースを知ったゼンショーは支援を決意する。しかし、いくつかの国際的な慈善団体の日本支部に話を持ちかけても、寄付は受け付けるが、その用途はソマリア向けに限定できないという。
そこで、日本のケニア大使館と交渉し、10月半ば、4人のゼンショー社員がケニアに入国。現地の製乳会社の製造現場の衛生状況などをチェックし、また、工場からキャンプまでの800キロメートルの輸送手段の確保、キャンプでの配布方法の手配を完了した。
日本企業が国際問題にかかわる場合、ほとんどが慈善団体への寄付によるもので、社員自らが牛乳供給網を構築するというのは異例の対応といえる。
12年初頭から、常温で1年保存が可能な牛乳24万パックを4ヵ月にわたり配布する。対象となるのは「キャンプにある24の教育施設に通う3~5歳の1万5000人」(廣瀬裕一郎フェアトレード部マネジャー)だ。
今回の供給網構築にかかった費用は約700万円。継続的に支援していくというが、「ゼンショー1社ではとても問題の解決はできない。他の日本企業にも呼びかけていきたい」(平野誠取締役)という。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 清水量介)