国民健康保険(国保)は、このように企業や公的機関に雇用されているのに被用者保険に加入できない人の受け皿にもなっている。

 国保は、もともと農林水産業者や自営業者のために作られた制度だが、昭和34年(1959年)1月1日に現行の国民健康保険法が施行されたときに、会社員や公務員以外の人はすべて国保に加入するという規定を設け、誰もがなんらかの健康保険に加入することを義務づけた。

 この国保法の制定によって日本は国民皆保険を実現したわけだが、他の健康保険に加入していない人をすべて受け入れているので、産業構造の変化や高齢化によって、加入者の内訳はこの半世紀で大きく様変わりしている。

非正規雇用の労働者と無職者が
全体の8割を占めている現状

 国民健康保険中央会の「国民健康保険の安定を求めて」(2017年11月)によると、国民皆保険が実現した1961年度の国保加入者(世帯主)は、農林水産業者が44.7%、自営業者が24.2%。この2つで7割を占めており、会社員などの被用者は13.9%しかいない。

 ところが、2015年度は農林水産業が2.5%、自営業が14.5%まで減少。代わりに増えている加入者割合のひとつが被用者の34.1%で、国保の中で大きな存在になっている。

 加入者構成が変化した理由は一次産業人口の減少もあるが、雇用形態の変化も影響している。いまや全労働者の3分の1がパートタイマーや派遣社員などの非正規雇用だ。短時間労働者への社会保険の適用は徐々に拡大されているが、それでも労働時間や年収が一定ラインに届かなければ被用者保険には加入できない。その企業の利益のために、賃金を受け取って働いているのにもかかわらず、被用者保険への加入を阻まれた人が国保に流れてきているというわけだ。

 もうひとつ、現在の国保で存在感を示しているのが無職者だ。

 健康保険は、仕事があろうがなかろうが加入しなければならない。国保はそうした無職者の受け皿にもなっており、1961年度に9.4%だった無職者の割合は、2015年度には44.1%まで上昇している。その多くは定年退職した74歳までの高齢者だ(75歳になると、後期高齢者医療制度に移行する)。